原作設定(補完)
□その50
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花火大会当日の朝、
「銀さん、大変です!!」
数日の前と同じようなノリで、銀時が寝ている和室に新八が飛び込んできた。
寝ぼけ眼のまま部屋から引きずり出された銀時だが、テレビの前に連れていかれてすぐに目が覚めた。
画面にはちょっと離れた位置から見慣れた制服を着た連中が集まっているのが写っていて、レポーターの声で、
「政府の要人宅での立て篭もりに真選組が対応しておりますが、未だ交渉がうまくいっておらず、長期戦になる見通しです」
という銀時にとってがっかりな報告をしている。
まあ、どんな約束をしても事件があればダメになってしまうのは覚悟していた。
が、今回はあんな風に約束しただけに期待した分、ダメージが大きい。
それでも、仕方ねーか、と溜め息をついて諦めようとしたとき、万事屋の電話が鳴った。
近くにいた銀時がそれに出ると、
「はい、万事屋ぎ……」
「俺だ。ニュース見たか?」
テレビ画面の中にいるはずの土方が早急に本題に触れてきた。
ついテレビに視線を向けるが土方の姿はなく、人目につかないところで電話をかけているらしい。
当然、約束のキャンセルの連絡かと思って労ってみた銀時だが、
「うん。朝からご苦労さん」
「行くから」
「……あ?」
「絶対……は無理だけど、できるだけ時間までになんとかする。だから準備はしとけ」
「…………」
小声で、でも必死な様子で伝えてきたのは約束のキープだった。
いつもならこんなとき、無理めの約束なんて土方はしない。
だから銀時も早々に諦めた。
なのに土方が諦めてないのは、やっぱり花火大会の効力のせいなのだろうか。
土方もソレに縋りたいと思ってくれているからか、銀時がそう思っているから叶えようとしてくれているからかは分からないけれど、その気持ちが嬉しくて銀時は笑ってしまう。
「……おい、万事屋?」
黙っている銀時に、"必死な自分"に気付いてしまったのか、電話の向こうの土方の声は不安そうだったので、
「分かった。じゃあ、時間までに連絡無かったら先に行ってる」
そう言って花火を見物する予定の"穴場"の場所を伝えた。
それから仕事に戻る土方に、一応念を押す。
「気ぃつけろよ。無理なら無理でいーから、焦ってミスしねーよーに、な」
「…………分かってる」
言われて"その通り"だったことに気付いた土方は、落ち着いた声でそう答えて電話を切った。
それが伝わってきて銀時は小さく笑う。
そして次々に打ちあがる花火を銀時は一人で見上げていた。
家を出てしまうと携帯電話を持たない銀時は状況が分からず、ただ待つしかなかったけれど、時間を過ぎても土方は現れていない。
一人で見ていると時間が長く感じるが、終わりまでの残り時間はあと15分といったところ。
「……やっぱ、無理だったか……」
この場所は穴場中の穴場で他に人影もなく、ベタベタしながら花火が見れたのになぁと拗ねてみる。
だがそれよりも土方が無事にお仕事してくれるほうが大事なので、そのぐらいは我慢するしかない。
空を見上げて溜め息混じりに独り言。
「……2人で見たら"永遠に"なら、一人でも半分ぐらい効果あるんじゃね?……それだけでも願ったり叶ったり……一人で見たって十分キレイだしなー……」
そう思って納得しようとしたとき、花火の音に混じってパトカーのサイレンが聞えてきた。
音は段々近づいてきて、銀時がいる場所から離れた場所にある道路あたりで急ブレーキの音と共に止まる。
そして走って近づいてくる足音が聞え、あちこち汚れた隊服姿の息を切らした土方が現れた。
「……ま、間に……あったか……」
「ギリギリな」
土方はホッとしながらフラフラとした足取りで銀時の隣に座り、息を
つきながら空を見上げる。
花火はクライマックスに向けて大きいのが何発も上がっているところで、銀時も続いて空を見上げながら呟く。
「前言撤回……やっぱり2人で見たほうがキレイだよな……」
「あ? 何か言ったか?」
「……あの、さ……」
花火を見ながら言いたいことが一つあった。
ずっと言わずになあなあでいたけれど、言わなければいけないことがあった。
「……知ってると思うけど…………好き、だから……」
花火を見上げたままそう言った銀時に、土方の決意も固まる。
銀時がそれを"言わない"から"それだけの関係"と逃げてきたけれど、言われてしまったし、二人で花火も見てしまった。
「……俺も……す、きだ……」
「……ふ、ふーん……」
いい歳をして何度も寝た相手と何やってんだ、と思いながら2人は"お互い"顔を見れないことをいいことに、嬉しそうににやけながら大きな花火を見つめるのだった。
おわり
うわぁぁぁぁ……恥ずかしいぃぃぃ。
ホントに三十路前の男が2人で何やってんだか(笑)