原作設定(補完)
□その50
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「……恋愛成就? んだそりゃ」
「歴、風水、方角、星のめぐり、全てが最高の日で、片想いの人は両想いになれるし、両思いの人は永遠に別れることはない、とかなんとか」
「……それを真に受けたわけか」
「いえ、それがまんざら嘘でもなさそうなんですよ。いろんな専門家がかなりの効果を保証してるって話で」
そういうものをいまいち信用してない銀時には眉唾な話しだし、なにしろ2人がそれで大騒ぎしてるのが分からない。
「で? その花火大会で、なんで神楽がハッピーライフになんの?」
「トッシーと一緒に行くアル!!」
「……お前が?」
「銀さんに決まってるじゃないですか! お願いですから土方さんと一緒に花火を見てください!」
2人に真剣な顔でそう詰め寄られ、銀時は一瞬困惑したあと、眉間にシワを寄せる。
土方となんとなーくそういう関係になって、昼間に遊びに行ったり、夜は酒を飲みに行ったり、朝帰りになったりするのを隠しておけなかったので、"付き合ってる"と誤魔化した。
そのとき、聞かれもしないのに、
「まあ、あれだよ? なんとなく気が合うからそういうことにしとこうか、ってなっただけで、俺は別にアイツじゃなくてもいいっていうか、アイツもたぶんそうだろうし、子供には分からないかもしれねーけど大人にはそういうことも必要なわけで、決して深い意味はないんだよ」
と言い訳をした。
なので、かぶき町なんかで生活しているだけあってそういう"爛れた大人の関係"への理解はあるだろうけど、銀時のこととなれば苦言の一つもあるかと思ったのだが、2人は何も言わなかった。
銀時に対しても普通だし、土方に対しても普通だし、拍子抜けしたぐらいの反応だったのに、急にコレだ。
「……な、なんで土方くんとその花火を見なきゃいけないわけ? 前にも言ったと思うけど俺は……」
「土方さんが大好きなんですよね?」
「……な、ななな、なにが……」
「隠しても無駄アル。銀ちゃんがずぅぅぅぅぅっとトッシーのことを好きなことなんてバレバレネ!」
「バ、バレバレ?」
「バレバレでした」
こっくりと頷く2人は、つまり、銀時があんな言い訳したことに対し、
『付き合えてものごっさ嬉しいくせに照れ隠し? 素直じゃない大人ってこれだから』
という哀れみの気持ちから何も言わなかったというわけだ。
銀時は更なる言い訳をすることもできず、真っ赤になってしまった顔を両手で隠してソファに崩れ落ちる。
思ったより素直な反応をされて、2人は"しょうがないなぁ"という気持ちで言った。
「だから遠慮なく土方さんと花火大会行ってください」
「一生ラブラブでいられるアルヨ。そしたら私のご飯も一生安泰ネ!」
「銀さんが真面目に働いてくれるので、万事屋も安泰です!」
"銀時の幸せを願って"ではなく、自分たちの給料とか食事のためか、と納得。
銀時は体を起こし、気恥ずかしくて2人の顔は見れないまま、
「…………まあ気が向いたら、な」
そう呟いてジャンプに視線を戻した。
これ以上背中を押しても逆に意固地になってしまう可能性がある、というのを知っている2人は肩をすくめて部屋を出て行った。
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