原作設定(補完)

□その50
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してやったり顔の沖田に嫌な申し出をされてしまった。

「じゃあ、賭けますか?」

「か、賭け?」

「旦那が誘ってきたら俺の勝ちなんで、そんときは…………」

「……な、なんだ」

「俺の非番と交換してやりまさぁ」

「…………あ?」

「その日、俺ぁ非番なんで土方さんと交換して仕事してやるって言ってるんでさぁ」

「……くじ引きでズルしてまで非番もぎ取ったのに、交換なんてしていいのか」

「心外でさぁ。ズルした証拠なんてねーでしょう。そう思うんならなんでそん時に言わなかったんで?」

『お前がいないほうが警備もトラブルなく上手くいくんじゃないかと思ったので言いませんでした』

本音は口に出さずぐっと我慢して、土方は話を反らす。

「……と、ともかく、なんで賭けで負けて非番とらなきゃ…………あ……」

「そうでさぁ。非番だったら旦那と遠慮なく花火デートできるじゃねーですかぃ」

唐突な申し出だったが、それを沖田に提案されたのがなんとなく怖いと思ったのに、

「デ、デデ、デー…………な、なんでてめーがそんなこと……」

「土方さん……俺ぁ、あんたにも幸せになって欲しいと思ってるんですよ、これでも」

もっと怖いことを言われた。

が、すぐに我に返る。

「…………本音はなんだ」

「あんたが旦那とラブラブになって同棲でもしてくれりゃあ、屯所が静かになって俺たちもハッピーになるな、と」

やっぱり沖田はそうでなくちゃ、と納得。

そうとなれば、たとえ銀時に花火に誘われなくても誘われたテイで非番を強奪する手もある。

が、そんな姑息なことは沖田相手に通用しないので、

「…………誘われたら、な」

そう言って興味ないような顔をしていたら、沖田も肩をすくめて部屋を出て行った。

どうせ沖田の期待するようなことにはならないはずだ。

非番にも出かけず屯所で仕事することが多かった土方が、急に頻繁に外出するようになり、相手が銀時だというのはすぐにバレた。

銀時とはなんとなーく勢いでそういう関係になっていたけれど、"それだけだ"と誤魔化せずにいたら"付き合ってる"と認識されてしまった。

もう面倒だからそれでいいかと、土方が思ったように、銀時も否定するのが面倒だったのかさらりと流してくれている。

だからたとえ銀時がこのことを知ったとしても誘ってくるかは分からない。

いや、むしろ誘われたら困る。

"好きだ"という言葉もなく適当な遊び相手だと思っていたのに、急にそんなことを言われても、

「……どんな顔していいか分かんねーだろーが……」

そうぼやいて土方は眉間にシワを寄せた。




同時刻、万事屋でも、仕事もなくてダラダラしていた社長のところへ慌しい従業員が飛び込んできた。

「銀ちゃぁぁぁん、大変アル!!」

2人が帰ってきたのでのんびりタイムも終わりだと、銀時は小さい溜め息をついてから答える。

「……どうしたぁ?」

「花火大会があるんです!!」

「……知ってますよ。おめーらはお妙と一緒に……」

「とうとう私のハッピー"ごはんですよ"生活が始まるアル!!!」

「…………は? なんで?」

「花火大会ヨ、花火大会!」

ヨダレをたらさんばかりに興奮しているせいで分かるように話してはもらえそうにない。

なので、銀時は比較的落ち着いて見える新八のほうに聞くことにした。

「……おい、ぱっつぁん。何があった」

「キャバ嬢のあいだで話題になってるんですよ」

「キャバ嬢?」

「今度の花火大会、ものすごい"恋愛成就"のパワースポットになるんですって」

お妙からの情報なのだろうが、銀時はやれやれと溜め息をつく。

本当に女ってヤツはそういう話が好きな、と呆れながらも説明を求めてみた。



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