原作設定(補完)

□その50
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翌日の夜、待ち合わせの場所に土方は益々浮かない顔で現れた。

まあ、今回は"非番を黙っていた"という後ろめたさもあるのだろう。

昨日銀時から土方に連絡をとり、沖田から非番を聞いたことをあえて伝えて約束を取り付けた。

土方のほうが約束の時間通りに来れるとは限らないので、待ち合わせは時間を潰せる居酒屋とかファミレスとかにしていたのだが、今回は人気の少ない公園にした。

人が居るところではできない話をするために。

「お疲れさん」

「……おう」

渋々会いに来たのだろうに、土方はそれでも小さく笑う。

笑ってくれるから土方が嫌がっていることを察してやれなかったこと。

触れるのを許してくれるからそれを後悔していると気付いてやれなかったこと。

そんなことを考えていたら、土方に不審がられた。

「……おい? このあとどこに行くんだ?」

「……ここでいい」

「ここ? ………………てめー、何考えてやがる」

何か誤解されたらしく、土方が嫌そうな呆れた顔をする。

それは"いつもの顔"だったから、銀時は少し嬉しくて笑ってしまった。

「多串くんさ、俺になんか言いたいことない?」

「あ?」

笑顔のままの銀時にそう言われたので、土方は何のことか分からないという顔をしたが、

「言いたいことも言わずに我慢してるとか、多串くんらしくないんじゃね?」

その言葉で察したようだ。

非番の情報を銀時に洩らしたのが沖田だった、という時点で気付くべきだったと眉間にシワを寄せた。

沖田に何かを聞いた上で、銀時が落ち着いて話をしようとしている。

怒ったり泣きついたり拗ねたりされたら適当に誤魔化すこともできたかもしれないが、これほど落ち着いているということは銀時も何かを覚悟したということだ。

土方は何度か躊躇った後、素直に白状した。

「……てめーとこうなったことを後悔はしてねー……だけど……違うんだ……」

「……何が違うって?」

「俺にだって……"こうしたかった"っていう……理想、的なもんがあるんだ……だけど、今の俺は……違う……」

悔しそうに言う土方に、銀時は諦めにも似た小さい溜め息をつく。

土方を諦める覚悟はしていても、もし付け入る隙があるなら得意の口八丁手八丁で説得できないかとも思っていた。

だが、土方が言う"理想像"が真選組の中にあるのなら、銀時には何も言えない。

それが一番土方らしいというのを知っているから。

みっともないことを言う前にちゃんと身を引いてやろうと、銀時が言葉を発するより先に土方はおかしなことを言いだした。

「だから…………やりなおしたい」

別れの言葉かと思ったのに、逆の言葉に聞えて銀時は土方を見る。

土方は悔しそうに、でも赤い顔をしていた。

「…………やり、なおす?」

「……そうだ……」

「……やりなおす、って……どういう意味?」

「だ、だから……酔った勢いとかじゃなく……もっとこう、ドキドキする
ような時間が欲しかったっつーか……ゆっくりじっくり会って話したりとかしたいっつーか……」

我ながら乙女チックなことを言ってると自覚しているせいか、土方の顔はどんどん赤くなっていくけれど銀時は『あれぇ?』と首を傾げる。

だが銀時が何も言わないので、不安になった土方が何かを訴えるような視線を向けてきた。

なので銀時もちゃんと疑問をぶつけてやる。

「……えっと……やり直すの? 無かったことにするんじゃなくて?」

「? 無かったことにはできねーだろ」

それは確かにそうなんだけれど。

じゃあ沖田から聞いた話は"なんとなく付き合うことになった"今の関係のことを差し、それを変えてみたいと思って悩んでいただけで、付き合うこと自体に不満はないということだろうか。

というか、むしろ"ゆっくりじっくり"とか"ドキドキするような時間"とか、もっとイチャイチャしたいと言っているように聞える。

『なんだ』

銀時は内心でふか〜〜〜〜い溜め息をつき、不安そうな土方に笑みを向けた。

「いいよ。どこからやり直す? 最初から?」

「…………怒ってねーのか?」

そう思ったから言いだせずにいたらしい。

「怒る? なんで? 多串くんが、銀さんのことものごっさ好きだからドキドキするような愛を育みたいって言ってるんのに怒るわけないじゃん」

「……そ、そそ、そこまでは言ってねー!」

「言ってますぅ。もっと早く言ってくれりゃあ良かったのに。銀さんはりきってやり直しちゃうよー」

何か反論したいのに当たってるからできない、という悔しそうな顔の土方を見ながら、銀時は相変わらずハッピーになるのだった。



 おわり



というバカップルなオチ。
三十路前の2人が可愛くアオハルして欲しいと思います。

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