原作設定(補完)
□その50
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#498
作成:2019/10/10
「はぁ!? …………分かってますぅぅぅ、お仕事頑張ってくださぃぃぃぃ…………嘘。大丈夫、気にすんなって……うん……分かった。またな」
電話を切って銀時は深い溜め息を付きながら机にぱたりと体を伏せる。
"物分りが良い恋人"を演じるのもなかなか大変だ。
咄嗟に嫌味を言ってみたものの、電話の向こうで"すまなそう"にしているのに気付いたら、ああ言わざるを得なかった。
なので"見えてない"今は拗ね放題。
ブツブツと独り言を言っている銀時に、廊下からひょこっと顔を出した神楽が声をかけてくる。
「銀ちゃん」
「……んー……」
「10日、トッシーと会わないアルか?」
「お仕事だってぇ」
「じゃあうちでノンビリするヨロシ!」
「……そのつもりですよぉ」
明るい顔で引っ込んだ神楽と違い、銀時は浮かない顔のままだ。
デートをキャンセルされて落ち込んでいるのが分かっていながら何を喜んでるんだ、とは間違っても口にできない。
きっと、代わりに精一杯楽しませてやろう、と思ってると分かっているから。
初めての"誕生日デート"がダメになっただけで、いつもどおり新八と神楽たちが祝ってくれる。
分かっているのだけれど、やっぱり"ガッカリ"を忘れることはできなかった。
会うたびに「10日、忘れてねーよな」と念を押していたし、土方も「たぶん大丈夫だ」と言ってくれていたので、過剰に期待してしまったせいもある。
誕生日が近づいているというのに、一人になると切なげに溜め息をつく銀時。
一応子供たちの前では"平静を装えるぐらいには大人"だったが、こっそりその様子を見て新八は心を痛めていた。
そして10日の朝、神楽が居ないときを見計らって、もう限界、という顔で銀時に頭を下げる。
「すみません、銀さん」
「……なにが?」
「土方さんがキャンセルしてきたのは僕たちのせいなんです」
「……は?」
「外で神楽ちゃんと話しているのを土方さんに聞かれた……んだと思います」
「聞かれたって、なにを」
「……今年は誕生日会やらないって言われた神楽ちゃんがガッカリして、"毎年私たちがお祝いしてあげてたのに。土方さんが仕事になればいい"って……」
「…………なるほど」
事の次第を知った銀時は深い溜め息をつく。
怒っているのかと勘違いした新八が慌てて弁明するが、
「か、神楽ちゃんは寂しかったんだと思いますよ!? 本気でそうなればいいと思っていたわけじゃなくて……」
「わぁーってるよ」
銀時はそう言って新八の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
それから新八も部屋を出て行ったあと、電話の受話器を手に取る。
2人のしたことに怒ってはいない。
むしろ嬉しいし、寂しい思いをさせたと反省もしてる。
そして土方に対しては、呆れて、ちょっとムカついていた。
「……あ、土方くーん? 今日、ヒマ? ヒマだよね? 非番のはずだもんね? ……いやいやいや、シラを切るならこれから屯所に行こうか? ゴリさんに聞いてみる? ……認めるんなら、これから万事屋に来てよ。神楽に気ぃつかって嘘つくのが最善の方法じゃないでしょー。デートは止めて俺も誕生会に混ぜてくれ、っていうのが解決策だと銀さんは思うなー……あ?……"けっこう"じゃなくてものごっさ頭が良いんですぅぅぅ。分かったらさっさと大きなケーキ買ってうちに来る! じゃあね!」
言いたいことを言ってすっきりした銀時は、満足気にふんと鼻息をついて受話器を置く。
2人きりの誕生日ではなくなってしまったけど、それ以上に楽しめそうだからまあいいか、と思う銀時だった。
はぴば、銀さん!
おわり
…………当日のお話は、2人きりもいいけど、家族の話にしたいと思いました。
なのに、土方は出てこないし、お誕生日会も始まってない。
なにこれ?(笑)