原作設定(補完)

□その50
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#497

作成:2019/10/01




ずっとずーっと片想いをしていた土方に気持ちを伝えた。

ずっとずーっと黙っているつもりだったけれど、なんかもういいんじゃね? 言っちゃえばすっきりするんじゃね? という気持ちになったからだ。

拒絶されていたら、そんなノリで告白してしまったことをずっとずーっと後悔することになっただろうが、そうはなからなかった。

かといって受け入れられたわけでもない。

土方はものすごく微妙な顔をして、

「……そうか」

とだけ言った。

俺の気持ちに薄々気付いていたという顔だったけれど、嫌がっているでも、喜んでいる風でもなかった。

そのせいかその後も土方の俺に対する態度は変わりなく、喧嘩したり、一緒に酒を飲んだり。

俺も拒絶されなかったことにホッとしてしまい、"返事"はなくてももういいかという気になってしまった。

が、あれから数ヶ月経った先日、

「10日に返事をする」

なんて言われてしまう。

10日といえば俺の誕生日だ。

なぜその日をわざわざ選んだ?

もし拒絶する気なら、誕生日にフラれるなんて嫌な思い出は超いらない。

受け入れる気なら、誕生日とは言わず今すぐにOKして欲しい。

そう言いたくなったが、たぶん土方もまだ決めかねているのだ。

告白したときと同じ微妙な顔をしている。

自分の気持ち、俺と居るメリット、俺と居られなくなるデメリット。

頭の良いヤツなのでその辺がグルグル渦巻いて答えを出せずにいたけれど、何事もなかったかのように振舞うこともできなくなった、というところか。

だったら待つしかない。

誕生日が天国になるか地獄になるか、俺は内心でもだもだしながら待った。




『…………のに、あのヤロウ、来ねーじゃねーかぁぁぁぁ!!!』

待ち合わせの団子屋で銀時はそう心の中で叫びながら、団子を口に頬張った。

非番だというのでここで待ち合わせ、どこか静かなところへ移動して話を聞くつもりだったのに、時間を過ぎても土方は現れない。

ああいう仕事なので急に来れなくなったということもある。

時間ギリギリまで万事屋で電話を待っていたし、万が一の場合は空いてる隊士を伝令に寄越すはずだった。

なのに何の連絡もないまま銀時は憤慨しながら待っていた。

が、背後から、

「……はぁはぁ……悪い、遅れた……」

という"急いで来ました"という荒い息でそう声をかけられたとき、

「ぜ、全然! 俺も今、来…た……」

ヘラッと笑ってそんなことを言いながら振り返った銀時だったが、そのまま凍りつく。

そこに居たのはお待ちかねの土方ではなく、隊服の沖田だったからだ。

もちろん疲れた様子もなく呑気な顔をしていて、銀時の反応に"あれ?どうしたんですかぃ?"と言いたげな憎たらしさが垣間見える。

銀時が土方に告白したことは知らないはずだが、たまに2人で呑んだりしていることは知っているのでカマをかけたのだろう。

「あれ、本当に誰かと待ち合わせですかぃ?」

なんて言うので銀時は面倒くさそうにそっぽを向いた。

「別に」

「土方さんを待ってたんでしょう。知ってまずぜぃ」

意味有り気な笑みを浮かべてそう言われ、内心ギクリとしつつ顔に出さすにとぼけてみたら、

「何がぁ?」

「誕生日だから土方さんに団子を驕らせようってんですね」

なんて自信満々に返された。

まあ、その程度のことだと思ってくれていれば幸いだ。

が、沖田はとても"幸い"じゃないことを言い出した。

「けど、土方さんは来やせんぜ」

もしかして伝令役を遠まわしな言い方で沖田にやらせたのだろうか、とも思われたがそうじゃなかった。

「…………仕事?」

「いえ、屯所でのんびりしてます」

「あ? ……じゃあ、なんで来れないの」

「覚えてねーからです」

「…………は?」

「記憶喪失ってやつでさぁ」

ド直球すぎることを言われ、銀時はポーカーフェイスを忘れて、

「えええぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」

とマヌケな顔で驚いてしまった。


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