原作設定(補完)
□その50
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#494
作成:2019/09/23
坂田銀時は毎日がハッピーだった。
万事屋は相変わらず仕事が希薄だし、甘い物は食えないし、神楽と定春は大食らいでいつも腹減ったと騒ぐし、新八はメガネだし、家賃の取立てはうるさい。
だけど銀時はハッピーだった。
「悪い、待たせたか」
「ううん、俺もさっき来たばっかだから」
「……そうか」
明らかに嘘だとわかる銀時の言葉に、土方は小さく笑う。
ずーーーっと片想いしていた真選組の鬼の副長と、"約束して"会うようになったから銀時はハッピーなのだ。
酔ってムラムラが止まらなくなり暴走してしまったのが始まりだったけれど、男としてのプライドをズタズタにするような行為に及んだ自分を許してもらえないと思ったけれど、土方は呆れた顔で許してくれた。
それどころか今までどおり、偶然会って団子食ったり酒飲んだりしてくれる。
もしかして土方のほうも銀時とああいう関係になることを満更でもなかったのかもしれない、なんて考えて、
「あ、あのさ……俺、たち……お、お付き合いしませんか?」
思いきってそう言ってみたら、
「……てめーがそうしてーんなら……してやらねーこともねーよ」
やっぱり呆れた顔で笑ってそう言われた。
ということで、土方とめでたく交際することになった銀時は毎日ハッピーなのだ。
が、そんなハッピーに水を差したのは、それが面白くない人物。
「何か悩んでるみてーですぜぃ、旦那のことで」
団子屋で土方を待っていた銀時の前に現れたのは沖田で、ちゃっかり隣に座って団子を食いながらそんなことを言いだした。
非番の約束はともかく、それ以外で顔を合わせるのは未だに"ばったり"しかない。
だから貴重なお茶タイム狙いだったのに、現れたのは沖田だけでおまけに土方は一緒じゃなかった。
それだけで十分ガッカリな銀時に追い討ちをかけてくる。
「な、悩み? 俺のこと? な、なにを?」
「"止めておけばよかった"とか、"雰囲気に流された"とか、"なかったことにできねーか"とか」
「ちょっ、ちょっと待ってぇぇ! そ、それってどういうこと?」
「後悔してんじゃねーんですかぃ、旦那と付き合ったこと」
「はっきり言わないでぇぇぇ!!」
そう言われてみると銀時には心当たりがなくもなかった。
付き合うことになった当初は土方のほうも楽しそうだったのに、最近は浮かない顔をしていることが多かった、ような気がする。
仕事で疲れているだけなのかなと思っていたけれど、そうじゃなかったとしたら。
『あんな始まり方だったから、やっぱり嫌になったの? 思っていた以上に俺がマダオで呆れたの? 俺がずっと好きだったことに気付いて引いたの? エッチがねちっこくて付き合いきれなくなったのぉぉぉ!?』
思い当たることが多すぎる。
金もなくて食べ物もなくて生活が荒んでくると"なんで俺と付き合ってくれてんだろ"と落ち込む銀時だが、土方に会うとそれがふっとんでしまうので忘れていた。
土方のあの浮かない様子が気のせいだと思いたかったのかもしれない。
銀時まで浮かない顔をしているのを見て満足したのか、
「それじゃあ、旦那。頑張ってくだせぇ……あ、土方さんは明日非番ですぜぃ」
そう言って沖田は軽い足取りで帰って行った。
銀時に追い討ちをかける一言を残して。
いつもなら確定じゃないにしろ一週間前ぐらいには教えてくれていた非番の予定を、今回は聞いていない。
それは非番に会いたくなかったからだろうか。
銀時は眉間にシワを寄せて頭を?く。
『……そうならそうと、はっきり言ってくれりゃあいいのに……』
本当に土方が今の関係を望んでいないのなら、解放してやりたいと思うぐらいには土方のことが大切なのだから。
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