原作設定(補完)

□その49
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「……と、いうことだから……俺の"仕事"にお前らも同行してくれるか?」

「……一緒に花火を見る、っていうことアルか?」

「仕事だからな。浮かれるわけにはいかねーけど……まあ、花火ぐらいは見れないこともない、かな」

そう言ったら、今度こそ神楽が本気で嬉しそうに笑う。

「まじでか! 絶対アルな!?」

「ぜ、"絶対"は分からねーぞ……"たぶん大丈夫"ぐらいだな」

「絶対"たぶん大丈夫"アルな!! ありがとう、トシィ!!」

そうとなったら急いで報告したいのか、神楽は大はしゃぎで帰って行った。

「ト、トシって呼ぶなコラァ」

聞えるはずもないツッコミをしたあとで、土方はヤレヤレと溜め息をつきつつ、満更でもない笑みを浮かべるのだった。





花火大会当日、土方は私服の隊士たちに事前に、今日の任務中の指示と、

「仕事だからな。一般人のフリしてるからって浮かれすぎんなよ。これでなにかしでかしたヤツぁ、問答無用で切腹だからな」

いつもより厳し目に注意を言いつけた。

任務に失敗のない真面目なメンバーを集めたが、やはり隊服を着てないとなると祭りの中でハメを外したくなってしまうかもしれない。

なのでもちろん沖田はメンバーに入れなかったが、土方が居ないことでハメは外しているかもしれない、と心配ではある。

もちろん土方もそのつもりで気合を入れてはいたのだが、

「トッシー! マヨは大盛りで良いアルか? 今日は特別に許すアル!」

たこ焼きを買うんだと屋台に並んでいた神楽が、嬉々としてそう訊ねてくると、ついつい気も緩んでしまう。

「普通にしとけ。俺は全部食ってるヒマはねーから、残りはお前にやるし」

「まじでか! さすがトッシー、気前良いアル!」

たこ焼きを驕ってやったぐらいでそこまで言われると不憫だ。

本当は銀時を花火に連れ出す以外にも"土方に驕らせる"という目的があるんじゃないかと思っていたが、意外にも神楽たちは"おこづかい"持参でやってきた。

おそらく、土方と目が合うと気まずそうに視線を反らす天パーのせいだとは思う。

「銀ちゃん! あっちネ! マダオに場所取りさせてるから早く行くアル!」

「お前、長谷川さんにそんなこと頼んだの?」

「ビール一本でやってくれるって言ったアル」

「……安いなぁ、あのおっさん……」

神楽と新八の前ではいつもの銀時だったけれど、土方とはまだまともに口もきいていない。

一応今回のことは神楽も土方も"銀時のため"というつもりだったので、さすがの土方もムカついてきた。

ので、花火が始まると花火に夢中な神楽と新八に聞えないように、銀時に言ってやった。

「怒ってんのかてめー」

「……怒ってませんよ」

「じゃあ、なんだ」

「…………」

「やっぱり怒ってんだな……余計な真似して悪……」

「違いますぅぅぅぅ、おめーが悪いんじゃありませんんんん」

「……だから、じゃあ、なんだ」

「……か、神楽のお願い聞いてくれてありがとうね」

「……おう」

「だけどですね、おめーが行かないから行かねーとか言ってたわけじゃねーんだよ。俺は……おめーの仕事の邪魔はしたくねーって……思ってんですぅ、一応ぅ」

小声だったので花火の音でかき消されてしまいそうな銀時の本音は、なんとか土方に届いた。

土方が約束をドタキャンしても、急な呼び出して帰ってしまっても、そのときは拗ねたような態度をしてみせても、後からグチグチ言われたことはない。

銀時なりに我慢して気持ちを抑えてくれているんだと、そしてそれを知られるのが嫌だったことも、悔しそうな赤い顔が語ってくれた。

土方はようやく安心して笑う。

「大丈夫だ。仕事はしてる」

「……そうだろうけど……」

その"仕事中"ですら土方の苦肉の策だったと思っているのか、銀時はまだ自己嫌悪でしゅんとしている。

土方は上空の花火に視線を向けながら、すっと手を伸ばして隣の無防備な手を掴んだ。

「!!!!!?」

唐突な土方の行動に、視界の隅で銀時がものすごい驚いて、ものすごく動揺して、ものすごくワタワタしているのが見える。

おかげで、こんなことをしてしまって恥ずかしい、のを通り越して笑えてきてしまった。

「俺も……てめーと花火が見たかったからいーんだよ」

土方が楽しそうにそう言ってくれた。

"らしくない"ことをされて銀時のほうもものすごく恥ずかしくなっていたけれど、そんな風に言われてしまっては納得するしかないし、答えないわけにもいかない。

でもとても口に出して言えそうにはなかったので、熱い手をぎゅっと握り返した。

その熱さが気になっていまいち集中できなかったけれど、今まで誰と見たときの花火よりも、今日の花火が一番綺麗だと思う二人だった。



 おわり



ぐぁぁぁぁぁぁ!! 恥ずかしいぃぃぃぃ!!(笑)
妄想してるときは、もっと普通にイチャイチャって感じの手繋ぎになるはずだったのに、
いざ書いてみると恥ずかしいのはなぜ!?
正解:2人が恥ずかしがってるからです。
……ふふ……初めての手繋ぎ? かわいいな(笑)

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