原作設定(補完)

□その49
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#485

作成:2019/08/12




土方十四郎は悩んでいた。

ずっと片想いしていた銀時と、なんだかんだ色々あったものの、"付き合う"ようになった。

近藤たちにも、新八や神楽にも、あっさりバレたけれど、あっさり認めてもらったりして、割とハッピーな出だしだったように思う。

銀時自身も、仕事であまり頻繁に会えないことも理解してくれるし、優しいし、楽しいし。

日々充実しているように感じていたのだが、それが薄れてきたのはひと月ほど前からだった。

元々喧嘩ばかりだったので"好きだ"と気付かれても想いが通じることはないと思っていたのに、銀時は小さく笑って、

「いいよ、付き合っても」

そう言ってくれた。

だけどおそらく銀時はそれほど自分を好きでいてくれたわけじゃない。

告白されて嬉しい、って顔でもなかったし、たぶん興味があったとかその程度だったんじゃないかと思う。

それでも拒否されて拒絶されて会えなくなるより良い、と。

いつか自分と同じぐらいに、せめて新八や神楽ぐらいに、好きになってくれれば良い、と。

その土方の気持ちが通じたのか、銀時はいつでも会ってくれたし、優しくはしてくれている。

が、まだ好かれていると、惚れられていると、感じられないでいた。

『……気のせいじゃ、ねーよな……俺に比べりゃ、まだあのお天気アナとかのほうが好かれてんだろ……テレビ相手なのにだらしねー顔して見てやがるもんな……』

"本当に好き"な相手にはあんな顔をするんだと、気付いてから土方の苦悩は増すばかり。

ゆっくり待つはずだったのに、一緒にいることが増えれば増えるほど良くは深くなる。

『……そもそも、あいつが中途半端なのがいけねーんだ……好きじゃねーなら俺の気持ちなんか無視してくれりゃー良かったのに……あの腐れ天パ』

そんなことを考えてイライラしはじめたとき、名前を呼ばれていることに気付いてハッと我に返った。

いつの間にか隣に沖田が立っていて、一人モヤモヤしている土方を観察するように覗き込んでいたのだ。

「な、なんだ?」

「近藤さんが呼んでやす」

「そ、そうか、分かった」

銀時と付き合ってから何故か前ほど絡まれることがなかった沖田だが、土方の悩みを知られたらきっと面白がってまた絡んでくる。

なので何事もなかったかのように沖田の前から立ち去ろうと思っていたのに、それは見透かされた上のことだったようだ。

「旦那のことで悩んでるんで?」

「……な……なんのことだ……」

「誤魔化したって顔に書いてありまさぁ」

ド定番のハッタリ文句だとしても、沖田がそう言う時はたいがい何か知られている。



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