原作設定(補完)

□その49
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#484

作成:2019/08/11




閉め切った窓の外から微かに、夜の街かぶき町の喧騒が聞えてくる。

小さく荒い息と、肌に、唇に触れる音がそれに混じった。

万事屋の和室は真っ暗だったけれど、目を開けると目の前に白いもふもふと、火照ってうっすら赤く染まった白い肌が見える。

そして銀時の必死な表情。

約束よりちょっと遅れてやってきた土方は、せっかく用意してくれたつまみも酒も、それから会話もほどほどに和室に引っ張り込まれた。

だけど文句の言葉は飲み込んでやる。

そうさせたのは自分にも責任がある、と思っているからだ。

仕事仕事で銀時を放ったらかしにして、こうして会うのもひと月ぶりだった。

文句も言わず大人しく待っていてくれた銀時に対し、してやれることはこのぐらいだと思う。

まあ、それに土方も、銀時が自分を欲しがって必死になる姿を見るのは嬉しくもある。

だからは今日は、多少の無茶でも我慢してやろうと思っていた。



思っていたのだが……


「…………だぁぁぁぁぁぁ!!! もう無理!! ぜってぇ無理ぃぃぃぃぃ!!!」

「どわぁぁぁぁ!! …………なっ、なにしてくれてんですかコノヤロー!!!」

激しく拒絶するあまり、蹴り飛ばすように動かした土方の足は銀時の腹に当たって、布団からはみ出るぐらいに転がされてしまった銀時が叫ぶ。

だが土方にも言い分はあるので言い返す。

「無理なもんは無理なんだよ!!」

「何が!? ヤんのが!? いまさら生娘みたいなこと言わないでくださぃぃぃぃ!!」

「誰が生娘だコラァ!! ヤんのが嫌なわけじゃねーよ!!」

「……じゃあ、なんですか」

「暑いんだよ!!! 部屋が!!!」

納得できる言葉を力いっぱい叫ばれ、銀時は「ああ」と呟いて布団に上に座り直す。

冷房のない部屋+真夏のジメジメした高温+閉め切った窓+お互いの体温+激しい運度(途中)、と暑いモノが揃い踏みしているのだから無理はない。

だがどれもこれも仕方ないことだった。

「どうしようもできねーんだから我慢してくんない? 貧乏なのも夏なのも今すぐは解決しませんよ」

「……窓ぐらい開けたらいいだろうが……」

「いやぁ、土方くん、気持ちよくなっちゃうと声我慢できないしぃ、こんな町の住人でもそんなあられもない声を聞かせるわけにはぁ……」

「……ぐっ……」

反論できないぐらいには自覚があるらしい土方は、しばらく難しい顔をしたあと、立ち上がって着物の乱れを直す。

とてもこのまま続行してくれなそうなその様子に、銀時は途端に焦った顔で声をかけた。

「ちょっ……帰んの!? 待っ、な、何か考えるから……」

「出かけるぞ」

「……出か? ど、どこに?」

「涼しくて声も漏れないトコにだよ!!」

始めからそういう場所へ行けばいいのだが、どんな人目があるか分からないからと嫌がっていたのは土方のほうだった。

が、あえてそれを我慢してでも一緒に居てイチャイチャしてくれようとしている。

へらっと笑う銀時に、

「さっさと支度して追いついてこねーと、そのまま屯所に帰るからな」

気恥ずかしい故に不機嫌そうなフリをした土方がそう言って、先に部屋を出てしまった。

「えぇぇぇぇ!!? ま、待ってぇぇぇ!!」

バタバタと慌てながら叫ぶ銀時の声を聞きながら、土方は楽しそうにゆ〜〜〜〜っくり歩いて外に出るのだった。



 おわり



たまにはイチャイチャさせてあげようと思いました。
でも夏の万事屋はきっとこういうことになっているだろうな、と、
楽しい気持ちで書きました(笑)

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