原作設定(補完)
□その４８
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「で？ 本当はどんな依頼だったんですか？」
銀時にお茶を出してくれながら新八にそう言われ、銀時はもう一度焦らされる。
「えっ……な、なにが？」
「土方さんの依頼です。他にあるんですよね？ たとえば、神楽ちゃんには言えないようなやつ、とか」
たいぶ質は落ちるが"万事屋の土方十四郎"の異名を持つとか持たないとかやっぱり持ってないかの新八は、さすがにお見通しのようだった。
他にあると決め付けているし、肝心の神楽もいないのでもういいかと諦めた。
「…………実は…………」
昨夜のことをひと通り話したら、予想の斜め上をいっていたようで新八も大げさなぐらい驚く。
「えええっ！？ お、沖田さんが神楽ちゃんのことを！？」
「……はっきり名指ししたわけじゃねーらしーけど……特徴は合ってた……」
「…………へ、へえ……じゃあ、いつも喧嘩してたのは"好きな子につっかかりたくなる"ってヤツだったんですかね……」
「……そうかもな……」
思い返しても見ても"本気でいがみ合って喧嘩をしている"ように思えたのだが、沖田のほうが違っていたかもしれない、らしい。
複雑そうな顔をしている新八に、丁度良く聞いてみたいことがあった。
「神楽のほうはどうだと思う？」
「えっ！？ ど、どうって何ですか」
「２人の喧嘩の仲裁とかよくしてるだろ。神楽のほうも楽しんだり……喜んでたり、とかしてる素振りとかねーの？」
「えー……神楽ちゃんも沖田さんを好きなのかどうか、ってことですよね……」
「……うん……」
「うーん…………僕が見るからに…………」
「…………」
「そんな可愛らしい素振りはちっっっっっっっともありませんね」
新八に力いっぱいそう言われ、銀時もかくっと力が抜ける。
「そ、そうかのか？」
「喧嘩の後は本気で八つ当たりとかされます。嬉しいとか悲しいとか後悔してる様子は微塵もありません。本当に嫌いなんだな、って感じです」
神楽には力でも口喧嘩でも勝てない新八だけれど、まだ"色気よりも食い気"の神楽の本音ぐらいは見破れる。
新八がそう言うのならそうなのだろう、と銀時は小さく安堵の息をついた。
それを見て新八がにっと笑う。
「良かったですね、銀さん」
「…………何が」
「神楽ちゃんにその気がないって知って嬉しそうだから」
「？ なんで俺が嬉しがるんだよ」
「神楽ちゃんに彼氏ができなそうだからですよ」
「……はあ？……」
からかうつもりで言ったのに、銀時は意味が分からないという顔をしている。
なので新八は『自覚がなかったのか』と薄ら笑みで教えてやった。
「神楽ちゃんに彼氏ができたら寂しくなっちゃうじゃないですか。今までみたいに一緒にいてくれなくなるだろうし、どんどん可愛くなっちゃうだろうし」
「……別に……いつかはそうなるだろうが……」
「でも"まだまだ大丈夫だなぁ"って思ってたじゃないですか」
新八に言われて銀時は胸に手を当ててみる。
土方に話を聞いてから何度も何度ももやもやっとした気分になっていたのだが、それは"神楽が離れていってしまいそうな寂しさ"のせいだったのだろうか。
「……そういう……もんなのか？」
「僕も寂しいですけど、銀さんは特にずっと一緒に暮らしてるから。お父さんとかお兄さんの気分になっちゃうもんですよ」
普通の生活をしてこなかったせいでそういう感情に疎かった銀時は、新八の言葉にあっさり陥落した。
「……ホントに神楽にその気はねーか？」
「ないですね」
「……だったらそうはっきり言ってやったほうが良いよな」
「そうですね。沖田さんには悪いですけど、そのほうが僕たちも安心ですもんね」
当人たちには全く構わず、保護者２人はそう結論を出した。
となれば、早速土方にその旨を連絡しようと思った銀時だったが、ふと昨夜の土方を思い出す。
あんなに"安息の地"を求めている土方が、"神楽にその気はねえ"と言っただけで諦めてくれるだろうか。
いっそのこと"他に好きなヤツがいる"と言ってやったほうが諦めてくれるんじゃないか。
それを名案と思った銀時は、では相手を誰にするかと考えてみるが、
『新八……はちょっと弱いか……沖田くんのほうが似合いっていう気もするな……となると、近所のガキ共は全員ダメだな……大人で神楽をすげー分かってて強い男………………俺？ もしかして俺が一番似合いじゃね！？ はっはっは、イケメンは大変だね！ …………えぇぇぇぇ…………』
熟考の結果に焦ってしまうのだった。
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