原作設定(補完)
□その48
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「……ま、遠まわしに聞いてみるぐらいはできる、けど」
そう言ってから銀時はまた胸がもやっとした気分になったのだが、土方のほうはぱっと顔を輝かせた。
「本当か!?」
酔いが残っているせいか土方のほうも感情が素直で、こんな嬉しそうな顔は始めてだ。
「お、おう……だけど、あんま期待すんなよ」
「分かってる! あ! それとくれぐれも総悟には気取られないように頼むぞ! アイツに気付かれたら大変なことになるからな! ホンットに気をつけろよ!」
「わ、分かった。そっちも依頼料、よろしくな」
「まかせろ!」
そして土方は上機嫌のまま帰って行った。
まだどんな結果になるか分からないのに、あんなに喜ばれると複雑な気持ちになる。
『……沖田くんと神楽ねぇ…………まあ、見た目とか歳とかは似合いそうだけど…………』
2人が喧嘩をしているときはたいがい銀時も土方と喧嘩をしているので、二人が実際どんな感じなのかよく知らない。
想像しようと試みたのだが、やっぱり胸がもやもやっとしてしまい、
『……まあ、ともあれ神楽に探りを入れねーとどうにもならねーしな……』
という結論に達して銀時も寝てしまうことにした。
そして翌日。
いつものように新八が出社してきて起された銀時は、同じく起きたばかりで"美容のために早寝"した甲斐がないぼさぼさ頭の神楽と、ソファで向かい合って朝食をとる。
神楽が当番なのでお約束の"卵かけご飯"だ。
ぼんやりしていた銀時は、二杯目のご飯の上に卵を落した神楽に、
「そういえば、トッシーの依頼って何だったアルか」
そう聞かれて、『昨日? 何だっけ』と考えた途端に思い出してはっきりと目が覚める。
"依頼の対象"は銀時の返事を待ちながら二杯目のご飯も胃に流し込むように食べているので、
『こんな色気も素っ気もない女に恋愛事を聞くのか?』
という気分にさせられた。
「トッシーって土方さんですか? 依頼って、なにかあったんですか?」
事情を知らない新八が掃除スタイルでそう訊ねてくるので、銀時は言葉に詰まる。
何かのついでに遠まわしで神楽に探りを入れようと思っていたので、ここはなんとか誤魔化さなければならない。
適当なことを言おうとしたが、今後土方と何度も会わなければいけないかもしれないので、その度に誤魔化すのはキツイ気がする。
ので、
「そ、それがさぁ、土方くん、俺と友達になりてーみたいなんだよねぇ」
「……トッシーがそう言ったアルか?」
「そう! ほら、真選組の副長さんともなるとアノ上司とアノ部下たちに囲まれてて、友達っぽいヤツが作れないんだってさ。だから、たまに俺と遊んだり酒飲んだりしたんだって、よ?」
「……ふーん……だから酔った勢いで来たアルか……案外カワイイとこあるアルな」
「そ、そうだね! 目付きも態度も性格も悪いけど、あんな風に言われちゃったらたまに飲んでやるぐらいならいいかなぁ、って思ってさー」
咄嗟のでまかせを言ったけれど、神楽は素直に信じてくれたようだ。
そして三杯目のご飯を食べ終えてから、何かを思い出したように立ち上がる。
「あ! 公園でみんなと遊ぶ約束してたアル! 仕事に行くときは公園まで迎えに来てヨ」
「お、おう」
「行くよー、定春ぅ」
「ちょっ、神楽ちゃん! ちゃんと身支度整えて行きなよ! 頭ボサボサだよ!」
そのまま飛び出して行く勢いの神楽に新八が声をかけたので、さすがにそれは恥ずかしいのか急いで身支度するとあっという間に出かけて行った。
とりあえずその場はしのいだと銀時はホッと息をついたのだが、もう一人の従業員のメガネは節穴ではなかったようだ。
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