原作設定(補完)

□その48
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さすがに銀時の側で"非常識"を多く体験してきた2人だ。

銀時が2人に気付いて、

「新八ぃ、神楽ぁ、心配かけて悪か……」

ぱーっと嬉しそうに近づいてきた頭をがっしりと掴んで止めた。

「てめぇぇぇ……騙してたのか! 死んだフリしてやがったのか!」

「悪趣味ネ!! トッシーもグルアルか!!!」

即座にそう思って鬼の形相を浮かべる2人に、銀時も土方も慌てて首を振る。

「ち、違うっ!!」

「フリじゃねーんだって! あ、そうだ!! ちょ、ちょっと待ってろ!!」

銀時はワタワタと机の下に潜り込んでしまった取扱説明書を取り、新八と神楽の前に差し出す。

2人はそれをじっくりと読んでから、複雑そうな顔で銀時と土方を見た。

「…………これはつまり…………土方さんが……"した"んですか?」

「トッシー、銀ちゃんが好きだったアルか」

「……えっ……い、いや、そのっ、それはっ……」

状況証拠からみてそれ以外ないのに、子供たちにそう聞かれたら肯定しにくい土方に対し、

「そうなんだよ!! 多串くんが俺のこと大好きで、おかげで俺は生き返れたんだよ! だから、俺、多串くんと付き合うから!」

銀時は勝手にそう返事をして、大出血サービスの交際宣言までしてしまう。

「ええっ!!?」

驚いたのは土方だけで、新八と神楽はあっさりと受け入れた。

「……分かりました。お登勢さんたちには全部説明しておきますから……」

「ゆっくりイチャつくネ」

そして2人を置いてさっさと退散してしまう。

神楽と新八がそうしたのには訳があった。

階段を降りる足音にずずっと鼻水をすする音が混じる。

「まったく、人騒がせなマダオアルな。あとで2人にたっぷり驕らせるネ」

「ホントだよ。あんなにたくさんの人に来てもらったのに、説明するのが大変だよね」

「……大丈夫ネ……みんな、銀ちゃんが生き返ったって知ったら……喜ぶアル」

「そう、だね……良かったよね、神楽ちゃん……」

そう言いながら泣いている。

さっさとあの場から退散したのは、嬉しくて泣いてしまうのを銀時に見られないためだった。

そんなこととは露知らず、

「理解早えーな……まあ、あいつらも成長したってことかなー」

自分が死んで号泣している姿を見ていただけに、銀時はちょっと拍子抜けしたような顔でそう言う。

そして土方は困惑から難しい顔をしていた。

新八たちのことよりも、さっき銀時に言われたことのほうが気になる。

"付き合う"と言われた。

銀時がずっと好きであんなことをしてしまい、結果的に銀時を助けることができたのはとても嬉しい。

だが銀時が自分に対してそんな気が全く無かったことを知っている。

だからこんなことでもなければ一生隠しておくはずの気持ちだった。

なのに"付き合う"なんて言い出したのは、"おかげで生き返れた"からだ。

そんな恩で付き合ったって、そのうち辛い思いをすることになるんじゃないかと、思えてしまう。

「……万事屋……」

「ん?」

「……さっきの……付き合うって……」

「おう、よろしくな」

にいっと笑う銀時に"本当は嫌だけど仕方ない"という素振りはない。

それがいつか見えてしまうのが怖いなら、最初から無いほうがましだ。

「……そんな……恩義を感じる必要はねえ……俺の勝手な感情を押し付けただけだ……だから……」

"好きな相手と付き合える"のだからもっと単純に喜んでくれたらいいのに、情けじゃ嫌だと土方らしいことを言うので、銀時は小さく笑う。

「…………ソレが俺には大事だったんだけどね」

そして戸惑う土方の体をもう一度抱き締めた。

恩だろうが情けだろうが、こうして誰かを抱き締められること。

新八や神楽、そしてこのあといろんな連中の怒った顔と笑った顔を見られること。

それがどんなに嬉しいことか、それを与えてくれた土方に証明する方法は他になかっただけだ。

そういう思いで強く抱き締められて、ほんの少しだけ土方にも分かった。

遺体の前で新八たちを置いていったことを責めたけれど、そんなこと自分に言われるまでもなく銀時は身に染みて心を痛めていたはず。

置いていかずに済んだことを感謝してもしきれないことも。

だったら、一時のことになるかもしれないけれど、恩に着せてこの不毛な恋を成就させてみるのも一興だ。

土方は恐る恐る手を伸ばし、銀時の背中を抱き締め返してみた。




おまけ

「王子ぃ、明日の会合なんだけどな……」

「王子様、この書類のことなんですけど……」

「死ね王子コノヤロー」

「…………………………」

銀時が生き返ったことも理由も、新八たちによって津々浦々広まってしまい、"毒リンゴを食って死んだお姫さまを生き返らせた"ことでしばらく"王子"と呼ばれてしまう土方だった。


 おわり



一応ギャグだったんだけど、やっぱり死にネタはツライなぁ。
書くためには想像しないといけないわけで、ついついもらい泣き(笑)
王子と呼ばれているけど銀土です。

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