原作設定(補完)
□その48
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#475
作成:2019/06/23
銀時はズキズキと傷む頭を抱えながら、机の上の箱を見つめていた。
新八と神楽は、
「二日酔いじゃ使いモノにならなくて邪魔なんで来なくていいです」
と呆れたように言って仕事に出かけてしまったので、ぐったりしていた銀時に届けられた荷物。
ついさっき配達されてきたソレは、"超速達"の指定とともに"坂本辰馬"の名前が記入されている。
6時間前まで一緒に飲んでいた坂本からの届け物に、嫌な予感しかせず開けられずにいた。
が、箱の中からはなにやら爽やかな甘い香りがしていて、"二日酔いには甘い物"派な銀時としてはやっぱり気になってしまい、恐る恐る包みを開ける。
中に入っていたカードをまず手に取り、
"金時くんへ 恋人が出来るように祈ってます 坂本辰馬"
という内容に首を傾げ考えてから、ぼんやりと思い出す。
酒の席で、恋人も好きな相手もいないことをからかわれた気がする。
そんなことを言われても、万事屋なんて安定してない職業の自分と付き合うもの好きはいないし、役立たずの従業員とペットが増えてから余計にそんなことしてる時間はないし、積極的な女は嫌いだし。
その"役立たずの従業員"に置いていかれるような社長のくせに、贅沢で失礼で自分勝手なことを考えながら、銀時は包みの中の箱を取り出した。
質素な箱はちょっと重くて、蓋を開けると良い匂いのする真っ赤な木の実が現れた。
「……リンゴ?」
坂本が寄越したものだから多少得たいの知れない感があるが、手に取ってみても、匂いを嗅いでみても、リンゴのような気がする。
銀時はさらに首を傾げた。
坂本からのメッセージとコレが結びつかない。
が、箱から取り出したリンゴはますます甘くて良い匂いがするし、みずみずしくて乾いた喉も潤してくれそうだし、1個しかないから新八と神楽が帰ってくるまえに処分しないといけないし。
ということで、銀時は早速リンゴにかぶりついた。
シャクッと音を立てて口に含んだリンゴは本当に本当に美味しくて、
『辰馬もたまには良いものをくれるんだ』
と思って咀嚼しようとした瞬間、銀時は意識を失った。
「……いてて……」
目を覚ました銀時は額に手を当てて体を起こす。
気を失ったとき、机に額を思い切りぶつけたような気がしたからだ。
「……なんなんだ、いったい……」
何が起こったのか分からず、そうぼやきながら辺りを見回した銀時はとんでもない光景に凍りついた。
いつもの万事屋だったけれど、目の前には"机に突っ伏して倒れている銀髪のモフモフ"がいる。
自分自身をこんな風に客観的に見たことはなかったけれど、ソレが自分だというのはすぐに分かった。
長年付き添ってきた銀髪天パーと、オシャレな装い。
そして机には一口齧ったリンゴが転がっていた。
倒れているのが自分で、それを見ているのも自分で。
「……え? ……何コレ……やだコレ……ちょっ……」
動揺しながら自分に伸ばした銀時の手は、何にも触れずに倒れている自分の体に突き刺さる。
「!!!!?」
何度チャレンジしてもスカスカッと空振る自分の手をジッと見つた。
「……も、もしかして……これって……幽体離脱とかいうやつ!? ぎゃー、怖いっ!! ま、まずいっ、早く戻らないとっ!!」
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