原作設定(補完)

□その48
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#474

作成:2019/06/19




「あのさ……明日の予定なんだけど……仕事でダメになっちゃったかなぁー、みたいな……」

夜、自室で書類整理をしていた土方は、携帯に着信表示された名前を見て本人には見せないような顔で笑った顔を、その言葉を聞いて険しくさせた。

"明日の予定"とは土方の非番の日で、それをキャンセルしたいという話、というわけだ。

普段仕事が無くてヒーヒー言ってる万事屋なので、仕事が多いのは大いに結構なことだし、自分も常習犯なので文句は言いたくない。

が、今回で6月に入ってから4度目のキャンセルだった。

「……そうか」

「ご、ごめんな? つ、次は行けると思うんだけど……」

「気にすんな。仕事は大事にしろ」

「う、うん、ありがと」

寛容な土方に電話の向こうの銀時はホッとしているようだが、どうもオドオドしている気がする。

それはやましいことがあるからだ。

「……今の時期はどんな仕事があるんだ?」

「えっ!? あ、ああ、そうね……い、いろいろ?」

「梅雨に入ると雨ばっかで大変だろ」

「そ、そうでもねーよっ! 雨の日こそ稼ぎ時、みたいな!?」

そして、いつもなら一分でも会話を長引かせようとするのに、

「仕事中だろ? ま、またな」

そう言って電話は切られてしまった。

土方は通話の切れた携帯電話を見ながら溜め息をつく。

本当に仕事なら仕方ないけれど、嘘でごまかされて許してやるほど寛容ではないのだ。

前回までは別な日に非番を振り替えていたのだが、今回はそれをしなかった。

翌日、雨の中、歩いてかぶき町までやってきて、目当ての人物の姿を探す。

仕事をしている万事屋一行を見つけたなら、それはそれで解決したことになる。

もしくは、銀時を見つけたら本人にガツンと問い質せる。

が、土方の狙いはそっちではなかった。

「あ、土方さん、こんにちは」

「よう、マヨラー。頑張って働いてるか」

買い物袋を抱えた新八と神楽が、土方を見つけて先に挨拶してくる。

銀時と付き合うようになって万事屋に出入りするようになった土方なので、2人の土方に対する反応も柔らかくなったものだ。

が、

「おう……今日は非番だ」

土方がそう返すと、神楽のほうは変化なかったが、新八のほうが"しまった"という表情を浮かべたのを見逃さない。

何か知っているという証拠だ。

なのでズバリ聞いてやった。

「で? あの嘘つきヤロウはどうしてんだ?」

ド直球な土方の質問に新八も、"銀時に何度もキャンセルされた土方が切れて自分たちを探していたんだろうな"と察した。

だが銀時のことを思うと、どう誤魔化したらいいのかと悩んだ新八に対し、

「家で腐ってるアル」

神楽がペロッと言ってしまう。

「……家にいるのか?」

「いるアル」

「……ずっと?」

「ずっとネ」

予想外の答えに土方は眉間にシワを寄せた。

土方は、忙しい土方に飽きてもっとイチャイチャできる身近な相手と付き合ってる……けど、それを言えずにいる銀時、というのを想像していたのに。

そしてそんな土方の様子に、新八も"ここは正直に言ったほうが良さ
そうだ"と判断した。

「すみません。銀さん、この時期はダメなんです」

「……この時期?」

「インディペンデンスデイ、アル」

「イ、インデ?」

「梅雨のことです」

「……梅雨だとなんでダメなんだ」

「モフモフ増量大爆発ネ」

「あ?」

「銀さん天パーじゃないですか。湿気で纏らないし増毛状態でカッコ悪いって」

「…………ソレで?」

「はい。土方さんには絶対に見せられないって泣く泣く引き篭もってます」

知ってしまえば大したことじゃなかった。

そこまでして隠したいことなのだから、このまま知らないフリをして帰ってやることもできるが、このままキャンセルされ続けるのも癪だ。

突然押しかけて行けば会えそうだが、そんなに嫌なら逃走される可能性がある。

となれば協力者が必要だな、という顔を土方はしていたのだろう。

「家に来ますか?」

新八が先にそう言ってくれて、ニヤリと笑う土方だった。



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