原作設定(補完)

□その48
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#473

作成:2019/06/08




4月後半の某日。

「銀ちゃん! これ、行きたいアル!」

遊びから帰ってきた神楽が一目散に銀時のところへやってきて、一枚の紙を突きつけてそう言った。

銀時は読んでいたジャンプから目を離すことなく、眉間にシワを寄せる。

「お前ねぇ、帰ってきたらまず言うことが他にあるんじゃないですか。これだから今日日の若いヤツは……」

「た・だ・い・ま・アル! これ、行きたいアル!!」

神楽のほうも"おっさんの小言"をかわし、負けじと紙をぐいっと銀時の目の前に押し付けた。

どうやらどこからか貰ってきたチラシのようで、小さい溜め息をついて仕方なくソレを見た銀時が、

「…………"女子力を上げるための親子教室"ぅぅぅ?」

益々眉間のシワを深くして嫌そうに呟いたのに対し、神楽はぱーっと顔を輝かせる。

「そうアル! 一緒に行って欲しいネ! 私も女子力UPでせくしーだいなまいつになりたいアル!」

「……10年早ぇだろ」

「そんなことないネ。お子様向けの教室って書いてあるアル! ……って、誰がお子様アルかぁぁ!!」

ノリツッコミをしながら神楽が指差した先には、確かに"対象年齢10〜15歳"と書いてある。

内容をざっと見た感じでは、料理とか裁縫とかの趣味的なものをいくつか選んでちょっと体験させてくれるもので、神楽の期待するようなセクシーダイナマイツにはなれそうにない。

だが、だったら尚更銀時の出番はなさそうなのだが、

「こういうのはお妙に頼めよ。あ、料理は選ぶなよ」

「ダメアル。"親子教室"だから、銀ちゃんじゃないと。姐御とは親子に見えないネ」

「……"お母さん、お父さん限定。兄弟、友達との参加はできません"……差別だろ」

「どうせ銀ちゃんヒマなんだからいいダロ」」

「そうだよ。ヒマだからこそ余計な出費はできないんですよコノヤロー」

「大丈夫、一回目はタダって書いてあるネ」

一度無料で体験してもらい、気に入ったら有料で継続させようというものらしい。

だから財布を握っている親同伴なのだろう。

が、それでも銀時は渋るので、

「あー……めんどくせーよ。俺におめーぐらいの子供がいるっていうは無理があるだろ。疑わしい目で見られるだろ」

「銀ちゃんもうすぐ三十路ね。ギリギリ親子に見えるアル」

「まだですぅぅぅ!! まだ二年もありますぅぅぅ!!」

「大丈夫ネ、自信もてヨ」

「…………それに……あれだろ、"お母さん、お父さん限定"って言ってもお母さんばっかだろ。俺が行ったら悪目立ちするだろ。あとは……あー、とにかくめんどくせーよ」

「……銀ちゃん……私、給料全然貰ってないヨ……」

「……うっ……」

「タダなんだから一回ぐらい連れてってくれてもバチは当たらないネ」

神楽に痛い所を突かれてしまった。

日頃の行いと従業員への待遇が悪いせいで、これ以上なにを言っても言い逃れできそうにない。

そもそも神楽と言い合いになって勝てるヤツなどいないのだ。

銀時はもう一度チラシをチラ見してから、諦め気味の溜め息をついた。

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