原作設定(補完)
□その48
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#472
作成:2019/06/04
「トシぃぃぃ、ちょっと頼みたいことがあるんだけどぉぉ」
副長室で缶詰状態だった土方のところに、近藤がひょっこりと申し訳なさそうな顔を出した。
疲れていても近藤の頼みに反応してしまう土方なのだが、
「……なんだ……くだらない頼みだったら聞かねーぞ……」
ソレはソレでびしっと厳しく念を押す。
寝不足で目の据わっている土方に低い声でそう言われると、図星だった近藤も言い出しにくくなったようだ。
「えっ!? えっと、あー、まあ、くだらないと言えばくだらないんだけどー……うん、まあ、別に、いいかなぁ……」
「……はぁ……いいから言ってみろよ……」
「え? あ、そう? えっと、じゃあ……トシ、婦警さんに知り合い居ない?」
「……婦警?」
また"お妙関係"の話かと思っていたので、思わぬ内容に据わっていた目もしゃっきるとする。
「なんだ、婦警って。仕事でも頼むのか?」
「いや、仕事じゃないからプライベートで頼みごとができる人が良いんだけど……」
「……プライベートってなんだ。あの女は諦めて職場結婚でもしようってのか」
「諦めてませんんんん!!! 俺は絶対にお妙さんと結婚してみせますぅぅぅ!!!」
「そうかよ。じゃあ、なんで婦警なんか……」
「万事屋に頼まれたんだよぉ、誰か紹介してくれって」
「……万事屋? んだそりゃ……」
近藤と会話しながらも書類に目を通していた土方が手を止め、眉間にシワを寄せて近藤を見た。
土方と銀時の仲が悪いことをよく知っている近藤は、まあまあと宥めるように説明を始める。
「お妙さんとこの警備(自主的)をしてたら万事屋に捕まってな、婦警さんを紹介してくれって頼まれたんだよ」
「…………なんでアイツがんなことあんたに頼んだんだ……お、女が欲しいなら身近にいろいろいるだろうが……」
「あー、違う違う、そういうんじゃなくて一日だけ、フリで良いらしい」
「…………フリ、って、なんの」
「"付き合ってるフリ"、って言ってたな」
さらに近藤は細かい説明をしてくれた。
どうやら普段の生活があまりにもだらしないので、お登勢が「所帯でも持ったら落ち着くだろ」と見合い話を持ち出してきたのが発端らしい。
それに対し銀時が「付き合ってるヤツがいるから嫌だ」と拒絶したら、今度は新八と神楽も加わり、「相手は誰だ」、「本当にいるのか」、「居るなら会わせろ」というお約束の展開になり、困った銀時が近藤を捕まえて相談。
そして紹介できる婦警さんが居ない近藤が土方に相談した、という経緯だった。
「……それこそ頼める女はいろいろ居るだろ。なんで婦警だ」
「それが、かぶき町の住人じゃ嘘だってバレやすいし、バレなくてもそのまま嘘が真になっても困るだろ。婦警ならかぶき町の住人に顔見知りも居ないだろ、って」
まあ話の内容には納得がいく、という顔を土方がしたので、
「だからさ、トシのほうが婦警さんに知り合い多いだろ? 誰かいねーか?」
「な、なんで俺が……」
「俺は知ってますぅぅ。とっつぁんに呼ばれて本庁に行くと、婦警さんたちから携帯番号とかメルアドとか渡されてるだろうが!」
「あ、あれは、あっちが勝手に押し付けて……」
「頼むよぉぉ、トシぃぃ! 紹介したらお妙さんがチャイナさんたちと食事する日を教えてくれるって言うんだよ。偶然を装ってバッタリして驕ってやれば好感度UPするだろ、って教えてくれてさぁぁ」
それは近藤に飲食代を出させるための仕込みなんかじゃないかと思ったが、土方は言わないことにした。
それよりも気になることがある。
「……婦警紹介しろって……万事屋は、俺には言うな、って言ってなかったか?」
「え? ……………………!!! あ!! そうだ! トシには"あとでバカにされるから知られないように"って言われてたんだった!!!」
どうやら厳しく……とても厳しく念を押されたようで、近藤は蒼白になっている。
土方は深い溜め息をついて言った。
「……分かった」
「トシィィィ! 知らないフリで協力してくれるのか!?」
「いや、俺が話をつけてくる」
「え……でも……」
「大丈夫だ。あの女が食事をする日は聞いてきてやる」
「あ、そう?」
だったら全部土方に任せておけばいいか、と近藤は安堵して部屋を出て行った。
もう一度溜め息をつき、土方は机の上の書類を夜までに片付ける決意をするのだった。
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