原作設定(補完)

□その47
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「わざわざ来てやったんだから茶ぁぐらい出してくんないかなぁ」

「茶菓子も忘れるなヨ!」

「あ、すみません、お茶菓子余ってたらタッパーに入れて持って帰っていいですか」

土方が屯所に戻ってくると、同行した銀時と、一緒に着いて来た子供たちは自由気ままに振舞っていた。

副長命令で医療室に大量の菓子類が持ち込まれたが、

「あ! 旦那っ、ストップ! 食べちゃだめですよ!」

「あーん? ジミーのくせに俺の食欲を邪魔する気ですかぁ?」

「体重とか血糖値とかも必要なんですよ! 値が過剰になって薬の投与に失敗したら戻れませんよ!」

「……うぐ……」

山崎に正論を吐かれて銀時はしょんぼりする。

「銀ちゃんの分は私たちが食べてあげるヨ。安心するヨロシ」

「全然どこも安心できないんですけど。終わったら食うから少しはとっとけよ」

「私の胃袋で"良い"アルか?」

「どこへんが良いわけ?」

きゃっきゃと会話する銀時と神楽。

見た目だけで言えば、女ッ気の少ない屯所において"華やか"であるとも言える。

まだ元に戻ったわけでもないのにお気楽なことだ、と思いながらも土方も笑みになった。

そこへ隊士が近藤からの伝言を伝えにやってきた。

「副長、すみません。局長に、会議に参加できるか聞いてこいと言われたのですが……」

「ああ……分かった、すぐ行く。山崎、じゃあ、ここは頼んだぞ」

「はい」

完全なる私用で会議を欠席するわけにもいかないので、銀時の検査の監修は山崎に任せることにした。

そして一応銀時たちにも念を押していく。

「万事屋、元に戻りたかったら山崎の言うこと聞けよ。ガキ共はウロウロしねーで、大人しく菓子食ってろ」

「「「はーい」」」

返事だけはいいんだよな、と小さく溜め息をつきながら土方は会議へ向かった。



会議をさっさとぱっぱと終わらせて戻ってきた土方は、医療室の前の廊下、正確には扉や窓に隊士たちがべったりと貼り付いているのを見つける。

どうやら見つからない程度に隙間を開けて、そこから中を覗いているようだった。

隊士たちの顔はなぜか嬉し、楽し、やらしい顔をしていて、土方は後ろから声をかけてみた。

「おい、何してんだ」

が、覗きに夢中の隊士たちは声の主が土方だと気付かなかったようで、覗きを止めずに返事だけする。

「中によ、銀子さんが来てんだよっ」

「…………銀子?」

「ほら、万事屋の旦那が女になったときの、あの子だよっ」

「…………それを覗いて楽しいのか?」

「だって、銀子さん、めっちゃ可愛いじゃん!」

「か、可愛い?」

「気だるそうな表情も良いし、ないすばでぃだし、仕草とかもエロイし」

「…………中身は万事屋だぞ?」

「どうせ見るだけなんだから中身はどうでもいいんです!」

「……今、中で何してる?」

「検査が終わったんで茶菓子を食ってます。ああ……饅頭を頬張る顔まで可愛いっ」

「……まじでか……」

「まじだって! お前もちょっと覗いて見……」

親切心で席を譲ろうとしてくれた隊士は、振り返ってようやく自分が会話していた相手が誰だか知った。

顔面を蒼白にし、

「ふ、ふふふ、副長ぉぉぉ!!?」

そう叫ぶと同時に、他の隊士たちもバッと扉と窓から飛び退いて直立不動になる。

土方と銀時が付き合ってることは公然の秘密になっていたので、一見したら、"恋人をイヤらしい目で見つめる男たち"という状態。

だが銀時のあの姿を"嬉しい"と思ったことがない土方にとって、それはどうでもいいことだった。

かといってこのまま"覗き"を行っていた隊士たちをダメージ無しで解散させることもできないので、

「おう、お疲れ」

「「「「「お疲れ様です!!!」」」」」

「お前ら……」

「「「「「!!!!!」」」」」」」

「こんなとこで休憩してねーで、さっさと仕事に戻れ」

「「「「「?????」」」」」

「……まさかとは思うが、休憩時間でもねぇのにここにいるバカはいねぇだろうな? 切腹もんぞコラァ」

「「「「「す、すぐ仕事に戻りますっ!!!!」」」」」

土方に睨まれて、隊士たちは蜘蛛の子を散らすように居なくなった。


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