原作設定(補完)

□その47
19ページ/30ページ




涼しげな風が吹く川原の土手で、ぼーっと座り込んでいる銀髪のもふもふを見つけた。

こんな時間に良い年の大人がぼんやりしている姿は怪しげだが、銀時は目的があってここにいるのが分かっているのでそれについては言及しないことにした。

近づいてくる足音に振り向きもしない銀時の横に、レジ袋をドサリと置く。

銀時はソレを見て、それから土方を見上げて言った。

「あれぇ、多串くんじゃん。非番にマヨの買出し?」

分かっているくせにしらじらしくそんなことを言うので、敢えてそれは無視して土方は隣に座る。

それよりも聞きたいことがあったからだ。

「誰に聞いた」

「何がぁ?」

「とぼけるな。誰かに聞いたから俺の誕生日を知ってたんだろう」
ビシッと言い返されて、銀時は小さく肩をすくめる。

隊士たちに祝わないように言及したように、知られたら面倒くさそうな銀時には最初から誕生日を教えなかった。

自分から「10月10日は俺の誕生日なんだよねー」と言って、無理矢理デートをねじ込んだ銀時に当然聞かれたが、

「俺はいい」

「えぇぇぇぇ」

「てめーと違って祝われて嬉しい年でもねぇ」

「年は関係ないですぅぅぅ。誕生日は恋人同士の大事なラブイベントですぅぅぅ」

「…………余計祝われたくねぇ」

「ちぇーっ。いいよ、誰かに聞くから」

「無駄だ。隊士らには口止めするし、ヤツらを切腹させたくなきゃよけいなことを聞くな」

「……誕生日教えただけで切腹って……どんだけ祝われたくねぇの、おめー」

というやりとりを以前していた。

誕生日が近づいてきても何も言わないので諦めたのだと思っていたが、こうして新八を使ってマヨを贈ってきたということは、誰かに聞いたといこと。

もちろん、銀時に"口の軽い隊士"の名前を聞いたからといって本当に切腹させるつもりはないが、その隊士と銀時に、反省させるぐらいの罰は与えるつもりだった。

が、銀時もそれは心得ていて、聞く相手は選んだ。

「沖田くん」

あっさり白状した名前に、土方は眉間にシワを寄せる。

近藤と隊士には厳しく口止めしたのだが、沖田には何も言わなかった。

"土方が銀時に誕生日を知られたくない"と分かったら、むしろ率先して言ってしまうからだ。

なので普通に銀時が誕生日を聞いたとしても、"土方が喜ぶことなんて教えたくない"と思わせるように口止めしなかったのに、銀時はそれも承知していた。

「……アイツが教えるわけねぇ」

「そう? "多串くんがぜぇぇぇぇぇったい誕生日を祝われたくないって教えてくんないんだけど"って言ったら、即答してくれたよ」

嫌がることを逆手に取ってまんまと聞き出されてしまったようだ。

深い溜め息をつく土方に、銀時はにいっと嬉しそうに笑う。

「もうバレちゃったんだからさ、あきらめて祝われてよ」

「…………めんどうくせぇ」

「俺一人ぐらいならいいじゃん。甘やかしてやるよ?」

「…………」

まだ渋そうな顔をしている土方に、銀時は最後の切り札を出す。

「当日限定で頭、もふらせてやるし」

土方の目がキラリときらめいた。

銀時のふわっふわの頭をもふもふしたいと思っているのだが、銀時が嫌がるのでさせてもらえないし、寝ている隙を狙っても起きてしまうのでできずにいた土方には、最大級の特典だった。

「…………しょ、しょうがねぇな……仕方ねぇから祝わせてやる」

「はいはい。今日、お仕事終わったらうちに来てね」

「……分かった」

全部銀時の思い通りになるのは悔しいが、久しぶりに自分の誕生日がちょっと嬉しい土方だった。


はぴば、多串くん!

 おわり



……全然イチャイチャしないで終わっちゃったな……
このあと、土方はものごっさ嬉しそうに銀さんをもふもふするし、
土方が嬉しそうだから銀さんも満足……
っていうイチャイチャになる予定なのでいいか(笑)
今年もたくさん土誕を書けたので良かった良かった。

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ