原作設定(補完)
□その47
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#467
作成:2019/05/15
土方十四郎は昼食を取るために、私服に着替えて屯所の外に出かけた。
いつもなら屯所の食堂でささっと済ませてしまうのだが、今日は逆に面倒なことがあるので逃げてきたのだ。
今日は5月5日。
言わずもがなの土方の誕生日だが、祝われる側の土方が、
「GWも終盤で誕生日だなんだと浮かれてなんかドジったら切腹さすぞコラァ」
と数年前に局長、ならびに隊士たちに向かって言ったら、あからさまに祝うのは止めてくれた。
だが屯所の食堂に行くと、
「副長! マヨネーズ余ってるんで使ってください!」
「副長! 甘くないケーキ買いすぎたんで食ってください!」
「副長! この煙草間違って買っちゃったんで吸ってください!」
そんなことを言って、なにげに祝ってくれようとするので今年は食堂に近寄るのを止めたのだ。
いつもの定食屋に向かう途中、見慣れたメガネを見つけた。
スーパーのレジ袋を持って、なにやらキョロキョロとしている。
以前なら万事屋関係者に近寄らないようにしていた土方だったが、今は"声をかけてもおかしくない"付き合いをしているので普通に声をかけた。
「よう、どうした」
「あ! 土方さん、こんにちは!」
新八はぱっと明るい顔でそう挨拶し、
「あの、このマヨネーズ買いすぎちゃったのでどうぞ!!」
わざわざ"回避してきた"ことを言われて、土方はちょっと不機嫌な顔になる。
どうやら新八がキョロキョロして探していたのは土方のようだ。
"何のつもり"なのかは分かっていたが、
「買った店に行けば返品できるだろう」
と言ってみたら、困ったような表情でへらっと笑われた。
新八が"誰かに頼まれてマヨネーズを渡しにきた"のを土方が気付いたように、新八も土方が気付いたことに気付いたからだ。
「すみません、返品不可です」
「…………分かった。預かる」
このまま受け取りを拒否しても新八が困るだけなので、土方はひとまずレジ袋いっぱいのマヨネーズを受け取った。
土方がそれをどうするつもりなのか分かったのか、
「すみません、お願いします」
新八はそう言ったあと、"ついで"を装って付け足す。
「あ、お誕生日おめでとうございます」
「……どうも」
土方が気恥ずかしそうに返事をしたので、新八は嬉しそうに笑って帰って行った。
子供に祝われているのを無下にできるほど土方も冷徹ではない。
"祝われて不本意"な感情は、元凶にぶつけてやろうとずっしり重い袋を持って、"ヤツ"がいそうなところへ向かう。
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