原作設定(補完)

□その47
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「……え……あ、いえ、大したお構いもできませんで……」

動揺して丁寧語になってしまう銀時に、土方は笑う。

「てめーの普段の生活が見れて楽しかった。あんまり会えないから、どんな生活してんのか気になってたんだ」

「……あ、そう……」

“えぇぇぇぇぇぇ”と内心で戸惑いっぱなしでぎこちない返事をする銀時に、土方は荒業を繰り出してくる。

人目はなかったとはいえ、こんな場所で土方が銀時に軽く抱きついてきたのだ。

そして固まる銀時に、

「……来年もてめーに祝って欲しいんだ……だから、俺に愛想をつかさないで欲しい……」

あり得ないことを言い出した。

「お、俺が多串くんに愛想つかすとか、あるわけないじゃん……」

「そうか。よかった。じゃあ、行くな」

MAXで動揺しながらの銀時の返事を聞いて、土方は嬉しそうに笑って名残惜しそうに屯所に入って行った。

残された銀時は考える。

『なにアレ、あり得なくね? 多串くん、死ぬの!? それとも俺!? 絶対普通じゃねーだろ!!!』

となれば、原因を突き止めないわけにはいかない。

銀時は屯所に飛び込んだ。

土方はまず自分の部屋に戻って着替えてくるだろうから、一番“怪しい”人物のところへ向かう。

在室の気配を感じて、銀時はある部屋の襖をばーんと開け放って叫ぶ。

「多串くんに何したんですかコノヤロォォォォ!!!」

「何もしてません……俺は」

問答無用で疑われたにも関わらず、部屋の主はきっぱりあっさり否定した。

が、きっぱりあっさり否定したのも、敢えて"俺は"と付けたのも、理由を知っているからこそ。

まあ"何かしていても"沖田が素直に白状してくれるとは思ってなかった。

銀時は「あ、そ」と呟いて部屋に入ると、沖田の前に座る。

「じゃあ、何があったの? アレ、なんかしたんでしょ?」

「あの野郎が自分の意思で、自分から飲みやした」

「……何を?」

「インフルエンザの薬でさぁ」

「…………インフルエンザ?」

思いがけずポピュラーな病名が出て来て銀時は首を傾げた。

「ずっと体調が悪いのを隠してやがったんですが、一昨日、近藤さんに無理矢理病院に引っ張っていかれて、インフルエンザだって診断されたんでさぁ」

「……こんな季節に?」

「今年は流行が長引いたみてーで、どっかで感染したんじゃねーですかぃ」

「……でも一昨日って、そんな早く治るもん? 元気そうだったけど……」

「ソレです」

「……ドレ?」

「どぉぉぉぉぉぉぉしても5日までに治さなきゃいけねーって言い張って、良く効くって巷で噂のあった認可外の薬を飲んだんでさぁ」

土方の失態が嬉しいのか、沖田は素直にべらべらと喋ってくれた。

「……その……副作用的な?」

「"普段言えずにいる本音が出る"らいんですが、何か"面白いこと"を言ってやしたか?」

そう訊ねたものの、銀時がなんとも言えない表情で顔を真っ赤にしているので、まあいろいろ察してしまったらしい。

にやりと笑い、

「ああ、でもそろそろ薬が切れるころなんで、"自分が何をしたのか"我に返って悶絶してるんじゃねーですかぃ」

そう"わざわざ"教えてくれたので、銀時はふらりと立ち上がって部屋を出た。

土方の様子がおかしいので何かされたのだと心配してしまったが、あれが本当に"土方の本音"だと言うのなら恥ずかしいのは銀時も同じだ。

付き合い始めたのは"なんとなく"だったし、土方もそうだったはず。

ただ、交際してから改めて一緒に酒を飲んだり、肌を重ねたりしていたら、気持ちだって改まるわけで。

一緒にいると楽しいとか嬉しいとかもっと会いたいとか、土方の都合を考えて言いたいのをずっと我慢してきた。

そう思っているのは自分のほうだけだと思っていたから。

副長室までやってきた銀時は、部屋の中に向かって声をかけるが、

「……多串くーん……ちょっと、いい?」

返事はなく、だが気配があるのでそーっと襖を開けてみた。

部屋の真ん中で足元に隊服を散らばらせたままうずくまり、情けない表情をした土方が顔を上げる。

「……よ、万事屋……」

その顔は真っ赤で、沖田が言うように"恥ずかしくて悶絶している"のかと思ったが、それだけじゃないようだった。

駆け寄って体を支えると、顔どころか全身熱く、息も荒い。

どうやら薬が切れてインフルエンザの症状もぶり返してしまったようだ。

「救急車ぁぁぁぁ!!! ……じゃねぇ、誰か……ジミーでいいかっ!?」

転がっていた携帯電話を手に取って山崎を呼び出している銀時に、土方が力の入らない手でその手を掴む。

「……さ、さっきのアレは……その……」

銀時が沖田から話を聞いているとも知らず、必死になって言い訳しようとするので、

「……ああいうことは、病気が治ってから素面で言ってくんなきゃ」

そう言ってにやりと笑ってやった。

悔しそうな顔をする土方を見て、"その時"は、自分もちゃんと言ってやらなくては、と思う銀時だった。



 おわり



おおう、土誕っぽくないオチになってしまいました。
薬のせい、というのは後付で考えた設定だったのに、
無意味に長くなっちゃったなぁ……まあ、いいか。
今年も2人が一緒に居てくれて嬉しい!
はぴば、土方さん!!

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