原作設定(補完)

□その47
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#465

作成:2019/05/05




「じゃあ、どこ行く?」

「てめーの行きたいとこ」

5月5日。

珍しく誕生日当日に非番がとれたという土方に、屯所まで迎えに来るように言われた銀時はいそいそとやってきて、そう言われた。

あれ?、と思いながら聞き返す。

「……え? 今日はお前の誕生日で、行きたいところがあるからって昼間っから待ち合わせたんですよね?」

「だから、"てめーの行きたいところ"に行きたい」

「……なぜに?」

「2人で行くところなんていつも決まってるだろ。てめーが一人んときにどんなとこ行ってるのか見てみてー」

いやに素直にそう話す土方に、銀時は頭をポリポリ掻きながら、

「暇潰しに行ってんだから、たいして面白いことねーと思うけど……じゃあ、行く?」

そう言って、頷く土方を連れてかぶき町へ戻っていく。

ジャンプを買うコンビニ。

昼寝をする公園のベンチ。

買い出しに行くスーパー。

家電を買ってるリサイクルショップ。

「あとは……昼間に行けるとこっつったら……パ、パチンコ、かなぁ……でも、多串くんはパチンコやらねーしね?」

「……やったことねー。けど、行く」

そう言われたので連れて行った遊興施設に、土方は興味津々だった。

うるさくてダメな大人がたくさん居るけれど、煙草吸い放題なのは良いと思ったらしい。

「……や、やってみる?」

「てめーは面白いのか?」

「うん、まあ……当たってれば……」

「じゃあ、やる」

「……そう……じゃ、一回……3000円だけ、な」

オススメ台とやり方を説明して、ちょっとのつもりで始めたのだが、1時間後。

中ぐらいの紙袋を抱えて"なるほどな"という顔の土方と、大きな紙袋を抱えてがっくりと肩を落とした銀時が店から出てきた。

「……多串くん……初めてなんだよね……勝ちすぎじゃね……」

「ビギナーズラックだろ……でも、煙草がいっぱい貰えて得した」

土方の持ってるほうには煙草がカートンで何本も入っていて、銀時のほうには、

「てめーにもチョコとか菓子とかいっぱいとってやっただろうが。ガキ共と分けて食え」

土方からのおすそ分けがたんまり入っている。

土方の前ではいつでもカッコ悪いところしか見せられないのは分かっていても、遊びぐらいは、と気負いすぎて失敗してしまった。

落ち込んでトボトボ歩く銀時に、全く気にしてない様子で土方が聞く。

「次はどこ行くんだ?」

「……次……あー、そろそろあそこの屋台やってるかな」

その屋台は夕方の明るいうちに始まり夜が更ける前に終わってしまう、親父の気まぐれ屋台だったので、比較的待ち合わせが遅くなる土方を連れてきたことがなかった。

「でもおでんがめっさ美味くて安いからパチで勝ったときとか来るんだよねー」

土方の誕生日なのだから、ちょっと良い店で良い酒でも飲もうと思っていた。

が、土方が行きたいと言うのだからと、嬉々として安い酒と美味いおでんを食べる銀時を、土方が嬉しそうに見ている。

そしてそんな土方を見て今日が何の日かを思い出した銀時が、慌てて土方に酒を注いだ。

「ほら、遠慮なく食えよ。安もんだけどな」

「食ってる。安くたっていいんだ、てめーと一緒なら」

「……え……酔って……ないよね、そんな飲んでないもんね」


普段なら絶対に言わないようなことを言われ、ドキドキするのと同時に不安になる銀時に、土方も気恥ずかしそうに言う。

「……それより……このあとはどこに行くんだ?」

「……え、えっとぉ……そうだなぁ」

「次は……いつものところでもいいぞ……」

酒のせいだけじゃなくちょっと頬を赤らめる土方の様子に、"いつものところ"がドコを指しているのか気付かないほど銀時も鈍じゃなかった。

銀時の誕生日にだってこんな風に誘ってもらったことなんてないのに。

そう思うとちょっと複雑な気持ちになるが、こんな日ぐらいと土方にデレる気になってくれたのなら嬉しくもある。

なので照れながら言う銀時に、

「じゃあ……そう、しますか……」

「おう」

土方も嬉しそうに笑うのだった。





翌朝も土方のデレは続いていた。

いつもなら太陽も昇らないうちに帰ってしまうのに、ゆっくりで良いと言われ、さらには、

「屯所まで送ってくれるか?」

なんてお願いされた。

少しでも長く一緒に居るのはやぶさかではないのだが、いつもと違いすぎて銀時は内心で戸惑いながら屯所まで送る。

屯所の前には門番の隊士がいて、二人で朝帰りの姿など見られたくないだろうからその前に“今日はここまで”となると思ったのに、土方はそのまま門まで歩いて行く。

案の定、隊士に見つかったのだが、土方と銀時を見て何かを察したのか門の中に引っ込んでしまった。

土方も「じゃあな」といつもみたいにあっさりと帰ってくれたらいいのに、なぜか改めて銀時を見る。

そしてとても穏やかな優しげな顔で、

「誕生日、祝ってくれてありがとうな」

なんて言い出した。


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