原作設定(補完)

□その47
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#461

作成:2019/04/17




「銀ちゃんは居ないアル」

万事屋の玄関で、開けた扉のすぐ向こうで仁王立ちの神楽がそう言った。

中には入れるもんか、という拒絶感がにじみ出ている。

一応"体の小さい女の子"だけれど、その迫力と存在感は大人の土方にも負けずとも劣らない。

だがここで引き下がるぐらいなら直接ここまで来ていないので、土方は頑張って聞いてみた。

「……どこに行った?」

「仕事アル」

「……いつ戻る?」

「分からないアル」

取り付く島もない。

なので素直にわざわざ訪問した理由まで話したのに、

「……最近あいつと連絡が取れない。また何か厄介ごとに巻き込まれてるんじゃねーのか」

「ないアル」

「……だけど……」

「しつこいネ! 銀ちゃんに構ってる暇があったらもっと働けヨ、税金泥棒が!」

「か、神楽ちゃん!! 何言ってんの! す、すみません、土方さんっ!」

キレて暴言を吐く神楽に、奥から新八が飛んできて慌てて謝罪する。

"お前らに言われたくねーよ!"と言い返したいところだが、子供相手に言ってしまうほど大人気なくもない。

土方は小さく息を吐くと、

「分かった。じゃあ、戻ったら連絡するように言ってくれ」

「はい! すみません!」

新八が何度も謝るので引き下がったが、土方は自分の憶測が間違っていないことを悟った。

あの2人の様子から、何かあって銀時が表に出られないのを必死で隠している、ということが分かる。

だが何故それを土方にも隠すのか。

銀時と付き合うようになり、万事屋にもちょいちょい手土産持参で顔を出しているから、子供たちともまあまあ打ち解けたと思っていた。

それが、以前のように敵視されると少なからずショックだ。

『……山崎に探らせるか……とは言っても、私用でアイツを使うのもな…………あれ?』

考え事をしていた土方は、いつの間にか見慣れない路地を歩いていることに気付く。

かぶき町は細い裏路地などが多く、だから見回りや警備がしにくいのだ。

まあ適当に歩いていけば出れるだろうと壁の角を曲がったとき、柔らかく軽いモノにぶつかった。

「うわ!」

「あ、すまん。だいじょ……」

感触と声から相手は人で女だとすぐ分かったので、まず謝罪を入れたのだが、視線を向けて土方は固まる。

銀色のゆるふわ天パの見覚えのある"女"がそこに立っていた。

女も土方を見て明らかに"マズイ!"という顔をしたのに、

「だ、大丈夫ですぅ、すみませぇん」

と言って立ち去ろうとするので、土方はその手をむんずと掴む。

「万事屋、てめー、何をして……つーか、なんだそのナリは」

「よ、よろずや? 違いますぅ、人違いですぅ」

「通用するか! 間違えるはずがな……」

「しつけぇぇぇ! 俺に構ってる暇があったらもっと働け、税金泥棒が!」

神楽と同じことを叫んで、女は土方の手を振り払うとぴゅーっと逃げて行った。


"お前らに言われたくねーよ!"と、今度こそ言いたかったのだが、追いかけてはみたもののかぶき町を熟知している銀時はあっという間に姿が見えなくなってしまった。

土方は忌々しげに舌打ちする。

腹を立てているが、警官侮辱罪にも値する悪態をつかれたから、ではない。

なぜ連絡が取れなかったのか、なぜガキ共に追い払われたのか、は分かった。

きっと"よからぬ事態が起こって土方に隠しておきたかった"から。

やましいことがなければ、女になってしまったとしても笑い話にして姿を見せにきたはずだ。

そしてお色気フルスロットルで迫り倒し、「せっかくだから一発ヤッとく?」とニヤニヤしながら笑えない冗談を言っただろう。

だがあの姿になった理由を説明したら怒られる、と思うから逃げ回っている。

だったら想定通りに怒ってやろうと、"逃げても帰る場所は決まってる"銀時を追いかけた。



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