原作設定(補完)
□その46
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「……バズーカで撃たれたり、地雷しかけられたり、マヨにおかしな薬を入れられて一晩中苦しんだり、風呂が熱湯になってたり、……そんなのは慣れた……」
愚痴っていた以上のことをされているんだな、と銀時は初めて知った。
そしてソレを許容できるぐらいには、沖田を可愛がっていることも。
だからこそ、今回のことは土方を傷付けてしまったらしい。
土方はもう一度目を閉じ、
「……『死ねコノヤロー』って言いながら、笑う…から……笑う、なら…………だけど……あんな風にされる…ほど……本当に嫌われ…てんの…かな……そうなら…俺…は………」
呟くそうに言っているうちにようやく眠くなってきたようだ。
寝息が整って完全に眠るのを待ってから、銀時はくしゃくしゃと頭を撫でてやる。
"怖い"と言っていたのも確かだろう。
だけどそれ以上に"悲しい"と思っているのも確かだ。
それを全部まるっとなんとかしてやれるかもしれない、と銀時は笑った。
どっこいしょ、と体を起こし、少し開けていた庭への障子を前回にし、
「……というわけだけど?」
縁側で一部始終を聞いていた、不貞腐れた顔をしている沖田と苦笑いの山崎に声をかける。
土方に会う前、山崎に頼んだのが「沖田くんを呼んできて」というものだったのだ。
土方の悩みを解決するためには、諸悪の根源に心を入れ直してもらわなければならない。
何も反論しないことろを見ると、沖田の土方の不調を気にしてはいたようだった。
なので銀時も念押しだけはしておく。
「多串くんだから何しても傷つかないと思わねーこった。これ以上酷いことしたら、俺も怒るからね」
"丁度良い。旦那とは一度本気でやりあってみてーと思ってたんでぃ"と言いたげな顔をしていたが、沖田は結局何も言わなかった。
反省して我慢しているのだと判断し、
「そんじゃ、俺は帰るから。後よろしくね、総一郎くん」
そう言って土方とした"ついててやる"という約束を反故にして、銀時は帰って行った。
まだむすっとしたままの沖田に土方を任せて。
久しぶりに深い眠りに落ちていた土方は、短時間だったけれど気分がすっきりしたような気持ちで目を開け、
「……んー…………!!!!?」
目の前に沖田の寝顔があってビクッと体を強張らせる。
寝ているとはいえ、沖田と向き合うのも久しぶりで、まだ恐怖を感じながら辺りを見回した。
銀時の姿はない。
沖田との確執を知っているはずの銀時が土方を放っていくはずもなく、となればこの状況は銀時が仕組んだことなのだろう。
小さく溜め息をついて、土方は体の緊張を解いて改めて沖田を見る。
性格が果てしなく曲がってしまって子供のころの面影がない……どころか、むしろ子供の頃からずっと小憎たらしい性格だったけれど、寝顔は昔のままだ。
どれだけ剣の腕が強くなろうと、どれだけ危ないイタズラをされようと。
そして土方は銀時の思惑に気付く。
沖田が"ここにいる"ということは、土方が心配したように本気で嫌っているわけではないはずなのだから。
『……初心に帰れ、ってことか……』
土方がそう思ったと同時に、寝ている沖田が眉間にシワを寄せ、
「……土方…コノヤロー…」
そう悪態をついてまた眠りにつく。
どうやら夢の中でも俺は酷い目に合ってるらしい、と思いながら土方は笑い、もう一度目を閉じた。
爽やかな朝……をとっくに過ぎた昼過ぎ。
今までの睡眠不足を一気に取り返すようにぐっすりと眠っていた土方は、
「土方さーん、いい加減に起きねーと…………危ないですぜ」
という不穏なセリフでぱちっと目を開け、目の前に置かれたジャスタウェイを見つめた。
腹の部分がデジタル表示になっていて、それはカウントダウンしていている。
その数字が"5"になったとき、沖田の"危ない"の意味を察して布団から飛び起きた。
廊下に飛び出すのと同時に"0"になったようで、ボン!!という音をたててジャスタウェイは爆発する。
すごい煙と爆風で、部屋の中がどうなっているのか考えるだけでもうんざりだ。
「総悟ぉぉぉ!! 危ねえだろうが!!」
「だから危ないって教えてやったじゃねーですかぃ。寝すぎは脳の働きを悪くするっていうから、目覚ましまでかけてやったってぇのに」
「悪くなるどころか、脳の働きが停止するわ!!」
「無事だったんだからさっさと起きて仕事しろ土方コノヤロー」
「おい、こら! 待て!!」
部屋をメチャクチャにして、言いたいことを言って沖田はぴゅーっと姿を消した。
昨日の夜の寝顔はまあまあ可愛いと思ったのに、目が覚めたらこの有様だ。
だけど昨日まで感じていた恐怖はなく、"いつもどおりの"気分の土方だった。
おわり
地愚蔵の回を始めて見たときはそういうオチかと笑えたのですが、
何回か見るうちに「土方……可哀想……」という気分になりまして、
そのままショックを引きずっていたら、という話を考えました。
…………3年ぐらい前の私が(笑)
ギャグ漫画でも"酷い目に合ってる人"に同情してしまう。