原作設定(補完)

□その46
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後悔させてやろうと、銀時の服装に細工をし、部屋をそれっぽくし、土方は裸のまま布団に入って銀時が起きるを待っていた甲斐があったというもの。

それと同時にガッカリもしていた。

こんなに落ち込んでいるのだから、やはり全ては酔った勢いだったのだろう。

そして"ガッカリしてる自分"に、土方は眉間にシワを寄せる。

銀時とどうにかなりたいと思ったことがあるわけじゃないが、あんなに必死に迫っておいて、"お前じゃないほうが良かった"と言われた気分だ。

まあ、いいと土方は溜め息をつく。

どうせ「お互い、なかったことにして忘れよう」ということになるはず。

何かあったと思っている銀時は気まずくてこれ以上絡んでこないだろうし、何もないと知っている土方はざまーみろと思って知らん振りすればいい。

そっと風呂場に干してある着物を確かめたがやはり乾いていないので、山崎に電話し、"本当のこと"を伝えて着替えと迎えを頼んだ。

そして銀時のところに戻り、おどおどしているだろうからビシッと上から許しを告げて帰ろう。

そう思っていたのに土方が部屋に戻ると、畳に正座でもふもふした頭をこすり付けるように土下座している銀時が居た。

「すいまっせんしたぁぁぁぁぁぁ!!!」

これ以上無いぐらい悲痛な叫びで謝罪され、土方の胸はチクリと痛む。

なにしろ、まあ色々されはしたけれど、ここまでされる必要がないことを知っているからだ。

なので怒ったフリのまま帰ろうと思っていたのに、

「……もういい。俺も忘れるから、てめーも忘れろ……」

後ろめたい気持ちのせいで優しげにそう言ってしまった。

これ幸いと銀時は喜ぶかと思ったのだが、思いも寄らぬ引止めに合う。

「待って!! 忘れられたら困るから、それは待ってぇぇぇ!!」

「…………あ?」

おどおどして情けない顔をしているはずの銀時は、悔しそうだけど真っ赤な顔をしていた。

「む、無理矢理だったのは、ホントに、悪かった……だけど……お、俺は、ま、前から……そ、そそそ、そのつもりだったので、忘れたくありません」

「…………」

「できれば……そのぅ……土方くんも忘れないで、前向きに……か、考えて欲しい……かなぁ……なんて」

『あれ?』と思って何も言えずにいる土方に、焦った銀時がたたみ掛ける。

「う、嘘じゃないよ? マジですよ? 本当はちゃんと最初から手順を踏むつもりで、昨日会ったとき"よっしゃ!今日こそ仲良くなるぞぉ!"って思ったんだけど飲みすぎちゃって、その……妄想と願望が先走ってしまって暴走しちゃったんじゃないかと……」

昨夜の酔っ払っていた銀時と同じことを、恥ずかしそうに白状された。

ヤッてしまったことに責任を感じて思ってもいないことを言っている、という感じではない。

"ガッカリした"土方のモヤモヤっとした気持ちがすーっと消えて行く。

「な、なのでっ、ひ、土方くんが、その……い、嫌じゃなかったら……えっと……」

「……仲良く……」

「えっ」

「な、仲良く、してーのか、俺と……」

「う……うん、そう、です」

銀時がはっきりそう言ってくれたので、土方もついつい嬉しくなって思わず赤面してしまった。

銀時の妄想と願望は、土方が望むものとは違っているけれど、ガッカリした分、なんでも良い気持ちになったようだ。

「……そうか」

「いいの!? まじでか!!」

「と、友達から、な。す、すぐに、アレとかソレとかは無理だけど……」

もう酔った勢いで強引にアレとかソレとかされた設定になっているはずだが、土方にモジモジしながらそう言われたら、気付かなかったらしい銀時はパーッと輝かせて頷くのだった。



 おわり



さくっと終わりましたが、書きたかったとこは書けました。
土方にケロケロする銀さんと、
何もなかったのに何かあったフリをする土方(笑)
土方は友達少ないので好かれることが嬉しい、っていう設定も好き。

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