原作設定(補完)
□その46
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#459
作成:2019/04/09
「くしゅん!……はっくしゅん!……ぶえっくしゅん!!」
立て続けにくしゃみをする土方に、
「くしゃみ3回は誰かに惚れられてるっていうよね? 誰かな? やっぱり俺だよね?」
なんてことをニマニマしながら嬉しそうに言わない。
もうとっくに言ったからだ。
非番に万事屋にやってきた土方は、ずーっとくしゃみをしつづけている。
「風邪? それとも花粉症かな」
「……体調も悪くねーし、鼻もムズムズしねー……くしゅん!」
うんざりした顔でそう言う土方は、確かに顔色も良いし元気そうだ。
ただくしゃみが出る、そんな病気があっただろうか。
心配で不安そうな顔をしている銀時に気付き、土方はぴたっと体を寄せた。
「……それより、ようやくの非番だぞ。ぼーっとしてる暇ねーんじゃねーのか?」
そう言って甘えてくれた……のだと思う。
でも実際は、
「……それよ…くしゅん! ようやくのひ…ぶしゅん! ぼーっとして…へっくしゅん! …のか?」
となってしまうわけで。
つまりは、このままイチャイチャしたとしても、ずーっとくしゃみを続けるわけで。
「……無理……集中できませぇん……」
甘える可愛い土方を前にして、銀時は早々に挫折にしてがっくりと項垂れる。
そんな銀時に申し訳ないと思うのか、しょんぼりしてしまう土方の体をむぎゅーっと抱き締めた。
「ま、今日はそっちはおいといて、一緒に寝ましょー」
「……具合は悪くねー」
「うん。具合は悪くなさそうだけど、目にクマ、あるしね。寝不足ではあるよね? 非番のために無理したんでしょ」
図星だったのか、土方はちょっと拗ねた顔をする。
「……してねーし」
「まあまあ、ぐっすり眠ったらそのくしゃみも止まるかもしれないよ。ストレスが原因とかさ」
「………だけど……」
「元気になったら倍イチャイチャしてあげるから、ほら、寝るよ」
そんな風に言い包めてくれる銀時に、土方はくしゃみをしながらこくりと頷くのだった。
翌日、銀時は団子屋で"思い出し溜め息"をついていた。
昨夜はあの後、土方がすぐ寝付いてしまったのでくしゃみは治まったかのように思えたが、陽が昇る前に目を覚ましてからはまた連発。
それでも「大丈夫だ」と言って仕事に戻ってしまったので、ここでこうして心配しているのだった。
まあ、あのままヒドイ状態だったら近藤あたりがビシッと命令して、渋々病院へ行ってくれるとは思う。
だけど、もうちょっと俺の言うことを真摯に受け止めて欲しいんだけどなぁ、と切なくなるのだ。
電話をして様子を聞きたいところだが、内心では嬉しいくせに、意固地になって怒り出すだろう。
あとで誰か(山崎あたり)を捕まえて聞くしかない。
なんて思っていたら、丁度良い、けど、あまり都合良くない相手が現れた。
「旦那、相変わらず暇そうですねぇ」
隊服のままで呑気な顔をした沖田がそう言って、当然のように銀時の隣に座る。
こんな風にのんびりしてるってことは、今日は土方と一緒ではないはずなので銀時も余計なことは言わなかった。
どうやら銀時と土方が付き合っていることは隊士たちにバレているようで、"あの鬼の副長"と付き合っているなんてすげーという目で見られたり、"俺たちの副長"と付き合ってるとかムカつく、という目で見られたりする。
沖田にもチクチクと弄られたりしてるので、ここで土方のことを聞くと逆に質問攻めに合う可能性があった。
だが、土方の"調子が悪い話"となれば喜んで話してくれる気もする。
どう切り出したものかな、と銀時が考えていると、沖田のほうから直球できた。
「土方さんの様子はどうしでしたか?」
「…………なにが?」
「くしゃみですよ。酷かったですかぃ?」
素っ気無く言ったけれど、『あれ?もしかして心配してる?可愛いとこあるじゃん、沖田くんも』……なんてことは、もちろん思わない。
ならばなぜ土方の様子を訊ねたのかのかというと、
「…………なにした」
「薬を飲ませやした」
犯人だからだ。
深刻に心配する前に、それを疑うべきだったと銀時は内心で頭を抱える。
沖田の様子から、なんらかの原因で”くしゃみだけ”する薬、と予想できた。
だから元気なのにくしゃみだけ止まらなかったのだろう。
そしてわざわざ銀時に”訊ねに来た”ことから、その”原因”は自分にあることも。
せっかくなので全部まるっと白状してもらうしかない。
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