原作設定(補完)
□その46
9ページ/19ページ
#456
作成:2019/04/02
桜の花びらがヒラヒラと舞い落ちてきて、盃の中に浮かぶ。
そんなありがちな演出は、そうそう都合良く起きるわけがない。
が、桜の季節も終わりかけの今夜、花びらの量が多すぎて放っておくと桜まみれになりそうなほどだ。
「……雪、みてーだ……」
自分の周りに積もっていく花びらを見て、銀時はそう呟いた。
静かに降るサマは本当に雪のようだったが、この"雪"は柔らかく冷たくもない。
それでも春とはいえ深夜の冷えた空気が、一人で飲んでいる銀時を侘しくさせた。
平日の深夜ともなると花見の酔っ払い客も姿を消し、チビチビと飲んでいる酒も体を温めてはくれない。
もう無理かな、と思ったとき、無粋な煙草の香りが漂ってくる。
「……ここは禁煙ですよ、おまわりさん」
振り返ると隊服のまま咥え煙草で歩いてくる土方がいた。
「誰も居ねえ」
「そういうことじゃなくね? それに俺が居ますぅ」
「てめーが黙ってればバレねーだろうが」
お巡りさんに有るまじきことを言うが、普段から"チンピラ警察"と呼称されてるのだからこのぐらいは許される、気もする。
土方はそのまま銀時の隣に座り、
「……まだ居るとは思わなかったぞ」
そう言ってチラリとだけ済まなそうな表情を浮かべた。
銀時はにいっと嬉しそうに笑う。
「要ると思ったから来たんでしょー」
「……念の為だ」
「待つよ。銀さん、約束は守る男だからね」
「……暇なだけだろ」
「それを言ったらお終いですぅぅぅ」
"もう桜も終わりだから一度ぐらい飲みたい。何時まででも待ってるから"
そう言うだけ言って電話を切った銀時に、土方はなんとか仕事を終わらせてかけつけた。
ああは言っていたけれど、他の花見客が居なくなるまで待たせてしまったから、さすがに怒る……まではいかなくても拗ねられるかと思っていたが、銀時はまだ笑ってくれる。
だから土方も笑える。
「ま、せっかく来たんだから飲みなさいよ」
銀時が盃を差し出して酒を注いでくれた。
あまり量の減っていない一升瓶の酒に、銀時が本当に気長に寂しく待っていてくれたんだと知る。
だけど土方は何も言わず、継がれた酒を飲み干す。
銀時に対して素直に、済まなそうな顔とか寂しそうな顔とか嬉しそうな顔を、見せられる性格じゃないのだ。
だけど土方が"見せられない"と思っているだけで、ちゃんと顔に出ているのを銀時は知っていた。
ほんのちょっとした変化だけれど、ずっと土方を見ている銀時には分かる。
「……おかわり」
「はいよ」
素っ気無く差し出す盃に、銀時は嬉しそうに酒を注いでやった。
土方が安心してくれるように。
どれだけ"待たせる"ことに罪悪感を覚えても、付き合うことを諦めないでくれるように笑う。
また来年の桜を二人で見るために。
おわり
あれ? しんみりしちゃったな。
来年も頑張るぞー……って感じな締めになりましたが、
また未定……この生活を来年まで続けられるか(笑)
でも銀土はまだまだ元気っぽいからなぁ……
頑張れるかなぁ、うん。