原作設定(補完)

□その46
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#452

作成:2019/03/23




冬真っ盛りのある日。

前日まで降っていた雪はあちこちに積もったままで、土方が歩く先々に雪だるまがこしらえられていた。

大人にとっては邪魔な雪でも子供にとっては楽しい遊び道具だ。

たまの雪ぐらい仕方ない、と思いながら土方は万事屋に向かって足を進める。

久しぶりの非番だというのに、この寒さでは銀時も外に出たがらないかもしれない。

そうしたら万事屋で二人でのんびりしたらいいのだが、この寒さの中、神楽を追い出すのも気が引ける。

今日は諦めて恋人同士のイチャイチャは保留し、家族でダンランするしかないか、それも悪くないな、なんて考えながら万事屋に到着した土方は、眉間にシワを寄せた。

"寒いから"と案じていたのに、玄関には貼紙がしてあって、

『土方へ この空き地にいる』

と私信と地図が書かれていた。

寒いのにそんなところに出かけていて、しかも土方にも来い、と言っているわけだ。

なんだってんだ、と思いながら地図の場所まで向かうと、

「銀ちゃん、良い加減に観念するアル!! 焼き肉食べ放題は私たちのものネ!」

「男はそう簡単に観念しませんんん!! まだまだだコノヤロォォ!!」

「はい、神楽ちゃん。雪玉おまたせ」

「あ! 新八コラァ!! 姿見ねーと思ったら"雪玉製造ますぃん"になんかなりやがって!」

「ずっといたわぁぁ!! 地味だからか!? 地味だから見えなかったのか!!」

「いくアル、銀ちゃん!!!」

明らかにはしゃぎまくっている三人の声が聞えて、空き地にひょっこり顔を出した土方だったが、タイミングが悪かった。

神楽の投げた雪玉を銀時は華麗に避けていたのに、その一つが土方の顔面にクリーンヒット。

「「「あ」」」

顔を雪まみれにしている土方に気付いて、3人は一瞬動きが止まったが、

「土方っ! 援護するから来いっ!!」

その声に我に返って、土方は銀時と共にドラム缶の後ろに避難する。

「あ!銀ちゃん、ズルイアル!!」

「助っ人は認められませんよ!」

ちらりと覗くと、神楽と新八は空き地の隅にあるプレハブ小屋の上に立っていた。

次から次へと神楽が雪玉を投げてくるが、今のところドラム缶が銀時と土方を守ってくれている。

ので、土方は顔の雪を払いながら状況を確認してみた。

「何やってんだ?」

「雪合戦!」

「……雪合戦て?」

「知らねーの? 雪玉ぶつけ合う遊びだよ」

そう言われて『ああ、そういえば』と土方は思い出す。

子供のころは雪の積もるような場所に住んでなかったのでやったことはなかったが、近藤のところで世話になりはじめたころ、総悟がやたらと土方に雪玉をぶつけてきたことがあった。

いつもの意地悪だと思って相手にしなかったがのだが、あれは雪合戦のつもりだったのだろうか。

納得する土方だが、ルール説明もなく一方的に雪玉をぶつけていたのだからやっぱり意地悪だったと思われる。

「さすがフォロ方くん、ナイスタイミング登場」

こんなに寒いのに、防寒したまま頬を赤くしてうっすらと汗をかきながら銀時はそう言った。

てめーで呼び出したくせに、と言う前に、

「銀時さま、土方さま、すみません。私が動けないばっかりに」

という声が聞えて振り返ると、たまが木箱の上に座っていた。

「いいから大人しく座ってろ」

「……はい」

しょんぼりしているたまに声をかけたあと、銀時は土方にも説明してくれる。

「たまと組んでたんだけど動けなくなっちまって。ババア、冬用オイル使ってやれっての」

そして銀時が一人になったのを好機と、新八と神楽に追い込まれそうになったところに土方が到着した、ということらしい。

ならば助太刀しないこともない、と土方はさっそく雪を手に取りぎゅっぎゅっと握って雪玉を作った。

「ぶつけるだけなのか?」

「おう。あ、石とか入れるのは今回は禁止だから」

「……"今回"は?」

「白熱してくると、よーーく固めて硬くしたり、硬いもの入れて"凶器に進化"したりするんだよ」

「危ないだろうが」

「危ないよ。ま、うちの子らは丈夫だから平気、かもしれないけど、やられたら嫌だから禁止」

そう言いながらも銀時は力を込めて雪玉を握っているような気もするが、土方はまた昔のことを思い出して、だから総悟がぶつけてきた雪玉はときどきすげー痛かったのか、と納得したりするのだった。


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