原作設定(補完)

□その45
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#445

作成:2019/02/28




「きゃぁぁぁぁ!! 痴漢!! 変態ぃぃ!!!」

「ち、違っ……」

叫び声とともに肌を思いっきり打ち付ける音が鳴り響き、ばたりと倒れる音が続く。

近くに居た者が見た一部始終は、銀色のもふもふっとした髪の男が女性に抱きつき、叫ばれ頬を力いっぱい打たれて昏倒する様子だった。

女性はぷんぷんと怒りながら立ち去り、男は頬をさすりながら体を起こす。

どうやら知り合いのようではないし、見ず知らずの女性に抱きつけばそれは間違いなく痴漢行為だ。

なのに男は苦々しい表情をしていて、"自らの変態願望を達成して満足している"ようには見えなかった。

そもそも人の多い通りで痴漢するヤツがいるか?、と周囲の人間が遠巻きに見ている中、ソレを任せても良い人物が現れる。

「どこのどいつだ、こんな真昼間に、こんな場所で痴漢する大胆なヤローは」

面倒くさそうに最もなことを言いながら現れた男は、咥え煙草で真選組の隊服を着ていた。

本来"痴漢"なんて犯罪のためにある組織じゃないのに、騒ぎを聞いた市民のみなさまの"警察のくせに痴漢を放っておく気か"という視線に耐えられなくなって渋々出てきた、という顔だ

そして痴漢男と真選組の男は、お互いの顔を見て「げっ」と呟いたあと、がっちりと抱き合った。

……ように見えただけで、正確には痴漢男が真選組の男に抱き付いた、のだが。

「……な、なんのつもりだ、腐れ天パ……」

「し、知らない! 俺の意思じゃねーんだって!!」

怒りで震える声で理由を問いただす真選組の男に対し、痴漢男は必死になって無理のある言い訳をする。

明らかに自分からしっかりと抱き付いているのに、その言い訳はどうだろう。

周りの人間が見守る中、真選組の男が痺れを切らし、

「つーか、いい加減に離れろ!!」

そう怒鳴るが、痴漢男は演技とは思えない困惑した表情で訴える。

「だから俺の意思じゃどうにもならねーんだって!!」

「ああ? てめーの意思じゃなきゃ、なんでこうしてるってんだ、万事屋コラァ」

「知りませんんんん! 多串くんこそ、警察なら困ってる市民を助けるべきじゃないんですか!」

「いいからどけって…………ぐぎぎぎぎっ……な、なんで離れねーんだ……」

「痛い痛い痛いっ! 力いっぱい押さないで!!」

真選組の男が腕で思い切り押しやっても、離れないどころか痛がる痴漢男。

二人がどうやら知り合いで、何やら困っている様子なので意見を出してくれる者たちがいた。

「あんちゃん、さっきの姉ちゃんに頬を叩かれたときは離れたじゃねーか」

「殴られると離れんじゃねーか?」

だがそれはありがた迷惑な助言。

土方がやる気満々の顔で掌をぐっと握るので、

「まかせろ」

「いやぁぁぁぁぁ! 多串くんに力いっぱい殴られたら気絶じゃすまねーから!」

「そんぐらいやらねーと離れないもんだろ、こういう場合」

「どういう場合!? 穏便にいこうよ、穏便にぃぃぃ!!」

殴られるのは嫌らしい銀時に必死に止められた。

だがこのまま市民の好奇な目に晒されるのを良しとしない土方が、なんとか銀時の隙をついて実行しようと企んだとき、懐の携帯が鳴り出す。


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