原作設定(補完)

□その45
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#442

作成:2019/02/04




「俺が以前から買いだめていた大量のチョコが姿を消した。食べたヤツは正直に手ぇ挙げろ。今なら酢昆布10個で許してやる」

和室から出るなりそう言った銀時に、お茶を飲んでいた新八が答える。

「酢昆布ってほとんど犯人われてるじゃないですか。っていうかアンタ、ホントいい加減にしないと糖尿になりますよ」

「またしても狙われた銀ちゃんのチョコ。良い匂いがして盗み食いしても仕方ないアル。ごめんね。でも酢昆布10個は横暴アル」

今回はあっさり認めて謝った神楽だったが、お詫びの品がないので銀時も引かなかった。

「俺にとってはお前の酢昆布10個分に相当する大事なもんだったんですぅぅ。食べたいのを我慢してコツコツためてきた俺の苦労はそれ以上だからね! この日のために銀さんものごっさ頑張ってきたんだからね!」

そんなことを言われて新八と神楽はカレンダーを見る。

「この日って……バレンタインデーですか? 銀さん、誰かにチョコ渡すつもりなんですか!?」

「わ、悪いかよ」

「銀さんに好きな人がいるなんて全然知りませんでした! 誰ですか!? 誰に渡すんですか!?」

「……教えねーよ……つーか、チョコ無くなったしな……バレンタイン自体なしだ」

チョコが無いことを思い出して銀時がしょんぼりと和室に戻っていく。

その後姿があまりにも悲壮感たっぷりだったので、

「あーあ……どうするの神楽ちゃん、銀さんマジっぽいよ」

 珍しく神楽にチクリと言う新八に、神楽は不機嫌そうに口を尖らせた。

「なんとかするアル」

「なんとかって? 酢昆布ないってことは、お金もないよね?」

「ねだるツテがあるネ」

それがどんなツテなのか、相手が誰なのかは分からないが、神楽が仕事がないときでもたまに酢昆布を食べてる理由が分かった。

金額がささやかなので余計な心配はしなくても大丈夫かもしれない、ととりあえず追求はしないことにした。

「うん、じゃあ、何とかしてみてよ。銀さん、本気みたいだから」

そう念を押したあと、立ち上がる神楽に新八はあることに気が付く。

銀時の恋バナなんて楽しそうな話題に、神楽がちっともノッてこなかったことを。

「神楽ちゃん、もしかして銀さんの好きな人、知ってる?」

「私はそんなに口の軽い女じゃないネ」

ズバリと訊ねた新八に、神楽はそう言って出かけて行った。

口は軽くないけれど、"知ってる"という事実を隠すことができていないことに新八は肩を竦める。





「というわけアル」

人の来ないひっそりとした穴場的な小さな公園で、団子を頬張りながらそう言った神楽を土方が微妙な表情で見つめる。

人気の無いところで仲良く団子を食べてる少女と大人の男、は一見通報されそうな感じだが、男が真選組の隊服を着ているのでその心配はないだろう。

思いがけないことを言われ、土方は神楽の話を繰り返してみたが、

「……つまり、万事屋が俺に告白するつもりで用意していたチョコをお前が食っちまったんで、俺にチョコを買え、と?」

「そうアル」

間違いはなさそうだった。

そもそもこの二人が何故一緒にいるかというと、

「なんで俺が買ってやらねーといけねーんだ」

「銀ちゃんからのチョコ欲しいダロ」

「べ、別に欲しくねー」

「好きなくせに我慢するなヨ」

土方が銀時に片想いしているのがバレて、口止め料として酢昆布だの団子だのを献上する羽目になったからである。

神楽にズバリと言われて情けないし、嬉しいような気恥ずかしいような気持ちでもあった。

「……アイツ……俺に渡すと言ったわけじゃねーんだろ」

「トッシーに決まってるネ」

「……なんでだよ」

「一緒にマヨが隠してあったアル。きっとマヨ入りチョコを開発するつもりだったネ」

「……それを分かってて食ったのか、チョコ」

「バレンタインデーのことはすっかり忘れてたネ」

土方相手なので悪びれた様子もなくそう言った神楽に、土方は小さく溜め息をつく。

確実とは言えないかもしれないが、待っていれば銀時が告白してくれるというわけだ。

「だからチョコ買って帰らないとダメアル」

「……いらねー」

土方なら快く買ってくれると思ったのに、素っ気無く言われてしまう。

「でも銀ちゃんが……」

「チョコはいらねー。その代わり、上手いこと言って野郎を飲みに行かせてくれ」

「トッシー?」

「……ま、なんとかしてやらあ」

にいっと笑う土方に、神楽もぱぁっと嬉しそうな顔をする。

このままいつまでも神楽に弱みを握られて驕らされるのも癪なので、銀時の気持ちを確認したうえで"なんとかして"やろうと思う土方だった。



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