原作設定(補完)
□その45
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#441
作成:2019/02/03
土方十四郎は不機嫌丸出しな顔でかぶき町を歩いていた。
私服で煙草をスパスパとふかし、体のあちこちが地味に痛んでは眉間のシワを深くする。
行き交う人々から「節分」、「鬼は外、福は内」、「豆まき」という単語が聞えてくるたび神経を尖らせているのには訳があった。
2月3日。
土方は毎年この日の朝、布団から出る前に願っていることがある。
沖田が記憶喪失になって節分のことを忘れててくれないかな、とか、近藤が急に真面目になって節分を禁止してくれないかな、とかだ。
だが今年も願いが叶うことはなく、部屋から出てきた土方を隊士たちが襲う。
「副長! 節分っす! 沖田隊長の命令っす! すいません!! 鬼は外ぉぉぉ!!」
説明し、人のせいにし、謝罪しつつ、隊士たちには"日頃の恨みを晴らそう"という気合が満ちていた。
憎まれても嫌われても立派な隊士になって欲しいと"鬼"になっているのに、こういうやり方で仕返しされるのは地味にへこむ。
行事ごとだけに、怒るのも止めさせるのも大人気無くて我慢すること3時間。
隊士たちのうさばらしに付き合うのももういいだろうと、屯所を抜け出してきたのだった。
それで解放はされたものの、限界まで我慢してきたのがすぐ落ち着くわけもなく、ムカムカしたまま歩いている。
今まではこのイラつきをどう抑えるか悩むところなのだが、今年は手段があった。
「豆ぶつけられるの嫌になったうちにおいで」
銀時がそう言ってくれたので土方は万事屋に向かっている。
あいつらと一緒にメシでも食べながら騒ぐと、屯所で溜めた苛立ちなどすーっと消えて気分が楽になるのだ。
そんなことを考えながら歩いていたらあっという間に万事屋に到着し、扉が開いたままの玄関から中に入る。
そして、
「鬼は外ぉぉ!!」
という声が聞えるのと同時に、体の正面いっぱいに豆がベチベチと当たった。
あまりのタイミングの良さに"もしかしてそのために家に招待されたのか"と思った土方が、
「……分かった……帰る……」
そう言ってしょんぼり帰ろうとするので、慌てて新八が飛んでくる。
「わぁぁぁぁ、土方さん! 違います! すみません!!」
どうやらワザとではなかったらしい。
「多串くん!?」
部屋の奥から銀時も飛んできて家の中に連れ戻された。
「すぐ逃げてくるかと思ってたのに来ねーから、今年は奇跡的に鬼役逃れたのかと思ってうちの節分始めてちゃったよ」
新八と神楽が豆まきを再開するのを聞きながら、銀時の説明に"我慢したのが裏目に出た"と土方は溜め息をつく。
それを、お茶を出したあと土方の向かいのソファに座った銀時に笑われた。
「……なんだよ……」
「ぷぶっ……もうさ、来年は前日からうちに泊まれば? そしたら豆ぶつけられるの三人分で済むよ」
「ぶつけるのかよっ」
「ちゃんと"鬼は内"って言ってやるって。ニコ中でマヨラーの鬼はうちでは大歓迎だからね」
にいっと銀時が笑うと、撒いた豆をちゃんと拾って戻ってきた神楽が、
「銀ちゃん、おなか減ったアル! "えほんとまっきー"作るアル!」
「"恵方巻き"だよ、神楽ちゃん」
「ソレアル! 知ってるか、トッシー! えほうまきには7種類の具材を入れると縁起が良いネ! トッシーは何入れるアルか? 酢昆布ちょっと上げても良いアルヨ!」
「……昆布は良さそうだけど、酢昆布だと酸っぱいんじゃないかなぁ」
きゃっきゃとはしゃぎながら台所に入っていく二人を見ていたら、土方からもようやく笑みが漏れる。
隊士たちのウサ晴らしに付き合うよりは、子供たちのお祭に付き合ったほうが楽しいだろう。
「……しょうがねーから三人分は我慢してやらぁ」
照れくさそうにそう言った土方に、銀時も嬉しそうに笑った。
おまけ
「多串くんには銀さん特製恵方巻きを用意してあるから。あとのお・た・の・し・み(はーと)」
「……てめーのち○こに海苔巻いて恵方巻きとかだったら……噛み千切る」
「(ひぃっ)……や、やだな、そんなこと言うわけないじゃぁないか!」
グシャグシャ ←ち○こサイズに切った海苔を握りつぶした音
おわり
銀土に"お約束"な設定を盛り込んでみました。
頑張って下ネタも入れたよ!(笑)