原作設定(補完)
□その44
24ページ/25ページ
土方が来るのを待ち構えていた沖田に、
「それじゃあ次は土方さんと旦那でヤリやしょう」
そんなことを言われて疚しいことを考えていた土方はビクリと体を強張らせるが、どうやら違った。
「ヤ、ヤル?」
「酒の飲み比べでさぁ」
"次は"と言っていたので辺りを見回すと、どうやらそんなことを繰り返していたようで、部屋には酔い潰れた隊士たちが大勢転がっている。
潰れるまで飲むなんて、明日仕事どうすんだ、と怒鳴ってやりたくなったがそれどころじゃなかった。
「だはははは、トシぃ、がんばれぇ!」
すでに全裸の近藤が上機嫌で土方を応援している。
きっと沖田は土方を逃がさないだろうし、もう銀時と飲み比べをしないと収まらない雰囲気なのだ。
ちらりと銀時を見たら目が合って、あーあ、という顔で肩を竦められた。
沖田も良い加減酔っ払っているようだが、逃げられそうにないので飲むしかない。
どうやって誤魔化すか銀時と相談できたらいいのに、と思っていたら銀時がしれっとした顔で手を上げたので助け舟を期待したのだが、
「はーい、沖田くーん」
「旦那、どーしたんで?」
「俺、もうだいぶ飲んじゃったしさー、土方くんと同じペースで飲むのはフリだと思うんだよねー」
「……それもそーですね。じゃあ、旦那はこれ、土方さんはこっちで勝負してくだせぇ」
銀時の提案に乗って沖田が出したのは日本酒用の普通のコップと、ビール用の中ジョッキのグラスだった。
助け舟どころか泥舟の上からさらに突き飛ばされた気分だ。
「なっ……これじゃ不公平すぎるだろうが!」
「大丈夫だよ、土方くんならきっとできるよ」
「やってみろ土方、お前ならできるはずだ土方」
「こ、こんの、ドSコンビ! やってやらぁ!!」
銀時と付き合い始めてから忘れかけてた憎たらしい"感じ"に、土方もついついカッとなってしまった。
当然、不公平すぎる勝負に勝てるはずもなく、20分後には他の隊士たちと同じように全身真っ赤にした土方が転がっていた。
「あーあ、やっぱり潰れちまいやしたか」
「そーだねー」
こうなるように仕組んだくせにぬけぬけとそう言った沖田は、銀時の膝枕でだらしない顔をしている土方を見て呆れた顔をする。
そして、こうなることが分かっていて沖田の陽動に従った銀時は、自分の膝枕でだらしない顔をしている土方の頭を撫でながら嬉しそうな顔をしていた。
土方が銀時の膝枕で寝ている、という不自然極まりない状況に対して沖田は何も言わない。
なぜなら、
「土方さんはまだ、旦那と付き合ってること俺らにバレてねーつもりなんですかぃ?」
とっくにバレバレだったからだ。
「沖田くんが知らないフリで土方くんを追い詰めたりするからですよ」
そしてそれを銀時も知っていて、あえて知れないフリをしていた。
その理由は二人とも当然、そのほうが面白いから。
そう思う沖田の心情は怖いので聞きたくないけれど、少なくとも銀時のは愛情からだ。
みんなにバレないように必死になって自分との交際を続けようとしている土方も、それが空回ってこうしてバレて醜態を晒している土方も、可愛くて仕方ないからだ。
そんな銀時の嬉しそうな顔を見て沖田は、ダメだこのバカップル、と思うのだった。
沖田の気が済んだところで、銀時は山崎の手を借りて「よいしょっ」と酔っ払った土方を背中に背負う。
「それじゃ、予定通り土方くんは外出するから。こんな状態だから帰りは遅くなるけど別に大丈夫だよねー」
「いっそのこと帰って来ないようにしてもらってもかまいませんぜぃ」
「ちょっ、沖田隊長、それは……」
「それはムリー。土方くん、ここが大好きだからー」
銀時がそう言うと、土方を連れて行かれるのを不満そうに見ていた隊士たちも、胸をほっこりさせる。
沖田だってあんなことを言ってても、本当に土方が帰ってこなかったら何らかの方法で迎えに来るはずだ。
モテモテの土方に溜め息をつきながら銀時は、今はぐでんぐでんで背負われて銀時の肩に顔を預け、
「……俺の……勝ちだ……ふへへ……」
飲み比べで勝った夢を見てニヤニヤしている土方に笑みを浮かべるのだった。
おわり
いつもどおりのネタをぎゅーぎゅーに詰め込んだような話になった(笑)
あ、でも銀さんはヘタレじゃない銀さんです。
土方さんにはメロメロですけどね。