原作設定(補完)

□その44
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#437

作成:2019/01/24




その日、真選組は大きな捕り物に出動していた。

ずっと追い続けてきた大物の逮捕劇となるため、局長ならび二人の副長が揃っているとなれば隊士たちにも気合が入る。

だが、結果は芳しくなかった。

綿密な計画を立てていたにもかかわらず、捜索したビルで捕縛されたり処分されたりした攘夷志士は予定の半数。

おまけに連中のリーダーである男が見つからず、報告を受けた近藤は苦い顔をしている。

「どういうこった」

「情報が漏れたような動きはなかったんですが……」

自分の調査に不備があったのかと山崎が困惑する中、さらに真選組にとって不名誉な情報が飛び込んでくる。

「局長!! 副長が……土方副長と坂田副長が居ません!!」

「な、なんだと!?」

血相を変えて報告しに来た隊士に、驚愕する近藤と、

「二人でどっかにしけこんでるんじゃねーのかぃ」

手加減なしに暴れまわったのが丸分かりなぐらい血塗れで呆れ声の沖田。

「し、しけこむ? え? そうなの? あいつらそうなの?」

信頼厚い二人の部下の思わぬ事情に戸惑う近藤だったが、事情通の山崎が反論する。

「ち、違いますよ! その気があるのは坂田副長のほうだけで、土方は副長はむしろ嫌がって……」

「嫌よ嫌よも好きのうち、って言うだろぃ。土方さんだって案外悪い気ぃしてねーように見えらぁ」

「え? そうなの? トシもそうなの?」

「そうでさぁ。だから今頃ふたりでちちくりあって……」

沖田が嬉々として土方を陥れようとしているのを邪魔するのは怖いが、そんな場合じゃないと隊士は三人の会話を遮った。

「そうじゃないんですよ! 捕まえた男の一人が、副長たちを拉致する計画だったようなことを言ってるんです!」

「拉致する計画!?」

「なので副長の所在を確認したんですが、一緒に同行していた奴らが、いつのまに居なくなってた、と」

その報告に、改めて隊士全員に二人の行方を訊ねたのだが、結局2人は見つからなかった。

「情報を洩らした男を取り調べていますが、計画を知っているだけで所在は分からないようです。他の連中からも芳しい話はまだ……」

「……どうやら俺たちのほうが奴らの計画に乗っかっちまったってことか」

副長たちの身を案じて難しい顔をしている近藤たちに対し、

「二人一緒に捕まってんなら大丈夫でさぁ」

沖田は気に留めた様子もない。

いつも悪口ばかり言っている沖田が二人の無事を信じているのに、年上の自分たちがあれこれ心配しているのが情けなく思えてきて、近藤は笑って言った。

「……総悟……そうだよな、あの二人が一緒なら無敵だよな!」

「そ、そうですね。あのお二人なら俺たちが助けに駆けつけるまでなんとしても堪えてくれますよね!」

沖田のおかげでそう気合を入れなおす隊士たちだったのだが、

「きっと今頃思う存分ちちくりあってまさぁ」

「そういう"大丈夫"かよ!!」

沖田は本当に"心配してない"のだった。


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