原作設定(補完)

□その44
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#435

作成:2019/01/10




「銀さんが行方不明なんです」

土方がそう連絡を受けたのは、最後に話をして5日後のことだった。



いつものように仕事をしていた午後、山崎がかしこまった様子で土方のところへやってきた。

「副長、あの、新八くんから電話がきてるんですが……」

屯所の代表電話にかかってきた電話を、そう言って土方に回す。

たったそれだけのことだが、土方に胸騒ぎを起させるには充分だった。

携帯電話ではなく屯所にかけてきたのも、新八が電話をかけてきたのも、"銀時が居ない"為だ。

案の定、電話に出た土方に、動揺した様子の新八が言った。

「銀さんが行方不明なんです」

銀時から、江戸を離れた田舎での仕事が入った、という話を聞いたのは5日前。

知り合いの知り合いからの紹介で三食昼寝付きの楽しい仕事だ、と三人で出かけて行ったはずだ。

楽観的になりすぎて怪しい仕事に引っかかったのかと心配したが、

「何があった? 何か、仕事でトラブったのか?」

どうやらそうではないらしく、新八が慌てて否定する。

「あ、いえ、仕事自体は問題なく順調だったんですが……銀さんが、散歩に行くと行って山に入ったまま帰ってこないんです」

「……さん、ぽ?」

「あー、でもそう言ってただけで、何かを探しに行ったようなんですよ。このあたりは雪も降ってないし、山は慣れてるから、って言って……」

だが夜になっても戻らず、翌日にみんなで探しても見つからなかった。

銀時が行方不明になってから3日目、報告と頼みを兼ねて新八が電話をかけてきたのだ。

「頼み?」

「はい。僕たちがいる村は過疎地で若い人があまり居なくて、銀さんを探すのに人手が足りないんです。一番近くの町の警察にも連絡したんですけど親身になってもらえなくて」

地元の人間でもない勝手に山に入った大人だから、と面倒くさがられたらしい。

本当だったら"職権乱用"と内部から文句を言われても、隊士の数名ぐらい派遣したいところだったが、そうできない理由があった。

「……すまねぇがこっちから手伝いを出すことはできねー。そのかわり、そっちの警察に協力するよう連絡しておくから」

「いえ、充分です! ありがとうございます!」

新八は丁寧に何度も礼を言って電話を切った。

自分を頼ってきてくれた新八に万全を期してやれなかったことは心苦しい。

それ以上に、いくら大人でもこの時期に山に入って戻ってこないという銀時のことも心配だ。

だが今、真選組は大きな仕事を抱えていて全員がそれにかかりきりになっている。

人数が多く群れているだけで大した問題を起していなかった攘夷党が、一月前から江戸で次々とトラブルを起していた。

真選組がそれを調べてこれから検挙しようとしていたところへ、おかしな情報が入ってくる。

検挙しようとしていた連中が意識不明の状態で発見された、というのだ。

命に別状はないものの、体中の生気を抜かれたような状態らしい。

同じ攘夷党の人間ばかり十名以上ともなれば、迂闊に残等を捕まえるわけにもいかず警戒態勢のまま動けずにいた。

それが二日前から、ということに土方が眉を寄せる。

「……アイツが居なくなってから…………なんて、関係あるわけねーよな……」

木刀で殴られた傷でもあれば真っ先に疑いたいところだが、ケガ一つしていないと報告されている。

心配事が一つ増えて、土方は大きい溜め息をついた。


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