原作設定(補完)
□その43
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#426
作成:2018/12/09
「そういえば、てめー、クリスマスはどうするんだ?」
平日真昼間の人の少ないファミレスで、久しぶりのパフェに夢中になっていた銀時は、そう言われて顔を上げる。
目の前には私服姿の土方がいるが、銀時は辺りをきょろきょろと見回した。
「……何してんだ」
「いや、今、誰かにクリスマスの予定を聞かれたような気がしたんだけど」
分かっているくせに真面目な顔でそんなことを言う銀時に、土方はこめかみに青筋を立てながら答えてやった。
「俺が聞いたに決まってんだろ」
「ええっ!? 土方くん、クリスマス知ってんの!? 付き合って此の方ソレっぽい思い出がな〜〜〜〜んにもないから、行事ごとに疎いのかと思ってたけど、クリスマス知ってんの!?」
仕事優先で行事ごとに参加することがほとんどない土方に、銀時は大袈裟に嫌味ったらしく言い返してくる。
普段は「仕事だから仕方ねーよ」と聞き分けガ良いだけに、時々こうしてまとめてチクリとやられるのだ。
内心はいろいろ、ものごーーっさいろいろ言い返してやりたいのだが甘受し、土方はぐっと我慢した。
「……クリスマスぐらい知ってる」
「へー。で、何? クリスマス休めそうなの? まさかねー、有り得ないよねー」
そう決め付けて銀時はパフェを食べ始めるが、本当はちょっと期待しているっぽかった。
だが今年もその期待を裏切ることしかできそうもなく、土方は誤魔化すように本題に戻す。
「ああ、有り得ない……すまねー」
銀時は"ですよね"という顔をして、謝られてしまったのでそれ以上は責めないことにしたが、
「……いいけどー。そんじゃ、"どうする"って何?」
「……が、ガキ共にプレゼントだよ」
思いも寄らぬことを言われてまたパフェを食べる手が止まる。
土方は自分でもらしくないことを言ってると分かってるのか、ちょっと顔を赤くして恥ずかしがっているようだ。
「新八と神楽に? プレゼント?」
「て、てめーのことだから用意してねーんじゃねーのか」
「当然だろ。子供だからってクリスマスにプレゼントが貰えるなんて甘い考えは銀さん許しませんからね」
子供を甘やかさない立派なことを言っているが、本音は金がないとか金がないとか金がないことであるのを土方は知っている。
「……いや、それがクリスマスってもんだろ」
「坂田家は違いますぅぅ。だからお年玉だって無いんですぅぅ」
それも金がないとか金がないとか金がないせいで、だから土方が余計な心配をしてしまうのだ。
「てめーんちの方針はそうかもしれねーが……な、なんか欲しいものがあるなら、俺が……買ってやってもいいかなー……なんて」
そう言う土方の声はだんだん小さくなっていったが、一応最後まで聞えた。
銀時の不甲斐なさをダシにしているが、つまりはあの2人に"プレゼントを上げたい"と言ってるらしい。
土方と付き合い始め、"誰にも内緒"というシチュエーションも捨て難かったが、内緒で2人が逢引できる場所は限られている。
ゆっくりできて金もかからない場所、なら万事屋しかない。
というわけで、早々に2人にはまるっと全部話してしまい、土方が万事屋に来るようになってから2人とも仲良くなかった。
『……プレゼントを買ってやりたくなるぐらい仲良くしてるとは思わなかったなぁ……』
そう思いながら、銀時は胸がほっこりと暖かくなる。
クリスマスに会えないことが確定した"がっかり"が吹き飛んでしまうぐらいに。
「……分かった。二人の欲しいもん、何気無くリサーチしてやらぁ」
「そうか、頼む」
「で? 俺には?」
嬉しいけれど嫉妬はする。
「あ?」
「俺にもあるよね? 当然あるよね? 買ってあげたいよね?」
「な、なんでてめーに……クリスマスはガキの……」
「でも、俺、良い子だったよね? 一年間いろいろ良い子にして待ってたよね?」
さっき一年の反省も含めて"すまねー"と言ったことを逆手に取られて、にやりと笑う銀時に土方は内心でホッと息をつく。
それでチャラにしてくれようとしてるのが分かったからだ。
チャラにして来年も仕事優先でつれない土方を待ってくれる、と。
「…………な、何が欲しいんだよ……」
ちょっと嬉しそうに土方がそう聞くと、待ってましたとばかりに銀時はテーブルに身を乗り出して土方にもそうするように指で手招きする。
ファミレスなので内緒話のつもりなのだろうが、『人前で言えないこと!?』と嫌な予感がしながら土方は耳を寄せた。
小声で囁かれた銀時の"欲しいもの"に、土方の顔はみるみるまに真っ赤になる。
「そ、そそそ、そんなことできるわけねーだろうがぁぁ!!!」
「できるって、土方くんはやればできる子だって、自分を信じて」
「……………………む、むむ、無理だしっ」
「俺はできるよ」
「……だ、だけど……」
「やってくれたら銀さんすごぉぉく、すぅごぉぉぉぉぉぉぉく、嬉しいんだけどなぁ」
期待に添えなくてもきっと銀時は無理強いはしない。
だけど、そんな風に言われたら、土方としてはできるだけの努力をしなくてはいけないわけで、
「…………わ…………わ、分かった……」
これ以上ないぐらい顔を真っ赤にしてうつむく土方に、銀時は満足気に笑う。
やってくれる気になっただけで、嬉しがらせたいと思ってくれただけで充分なのだから。
それを確認させてくれたクリスマスに感謝する銀時だった。
おわり
なんてことない会話の話。
思いつき(最初のきょろきょろする銀さん)から、
話を広げていくのが大変なんですよね。
銀さんの欲しいモノが何のかは、好きに想像してください。
土方が恥ずかしがりそうなことならなんでもオッケーです(笑)