原作設定(補完)
□その43
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いつもそのときは「仕方ない」と思うのだが、あとになってそれなりに落ち込んではいるのだ。
それを汲み取って、銀時はチクリと愚痴る以上に土方を責めたりしない。
だからますます落ち込んだりして、今に至る。
「それでお仕事の格好のまま来てくれたってわけ」
「……き、着替えてくるつもりだったんだけど……総悟にそのまま行ったほうが……てめーが喜ぶんじゃねーか、って言うから……」
「あ? ガキじゃあるまいし、サンタクロースの格好で喜ぶわけ……」
「……似合わねーか?」
そう言って銀時を見る土方は、白いつけ髭を外しているだけで普通のサンタの衣装と帽子なのに、こんな格好をしているのが恥ずかしいのか、もじもじしている姿は土方らしくなくて可愛いとも言える。
じっと観察していた銀時はあることに気が付いた。
土方の身体が寒そうに震えていた。
確かに暖房のない万事屋の夜は外と変わらないぐらい寒かったりするが、サンタクロースの衣装は税金を使って用意しただけあって安物のペラペラな布ではない。
中にちょっと暖かいものでも着てれば、そんなに寒くもないはずなのに、と思ったところでとんでもない可能性が頭に浮かぶ。
それを確かめるため、銀時は服の上からおもむろに土方の尻に触った。
「!!! 何してんだコラァ!!!」
今更尻を触られたぐらいで照れるような間柄でもないのだが、土方は反射的にそう叫んでパンチを繰り出す。
銀時はそれをギリギリでかわし、尻を触った手には”布一枚”分の感触しかなかったことを認識した。
「……土方くん、もしかして、その下、裸?」
確認したくせに半信半疑でそう訊ねた銀時に、土方は驚くのと同時に顔を真っ赤にして、透き通って見えるわけじゃないのに両腕で隠すように体を縮めた。
この様子では本当に裸なんだと察した銀時は、ドキドキムラムラする前に怪訝そうな顔をする。
「なんで? まさか……ずっとそれで仕事したんじゃ……」
「す、すす、するわけねぇだろうがぁぁぁ!!!」
「じゃあ、なんで」
「そ、そそ、そそそ、総悟が……そ、そうしたほうが、もっとてめーが喜ぶから、って……」
泣きそうな顔でそう言った土方に、そんなことまでそそのかされてやってしまうのかと銀時は呆れそうになった。
だがその前に気付く。
”そんなこと”を真面目に考えて実行してまで”銀時を喜ばせたい”と思ってくれたことを。
『……ドタキャンしたこと、そんなに悪いと思ってくれちゃった、のかね……』
きっと沖田にそれを感づかれ、こんな変態チックな提案を面白がって出されたのだろう。
ドSコンビの沖田が言うことなら間違いないとでも思ったのか、まんまと”裸エプロン”ならぬ”裸サンタコス”で来てしまった土方。
あまりのバカワイイっぷりに、呆れて萎えそうになっていた銀時の銀時も元気になってくる。
「あ、そ。じゃあお言葉に甘えてサンタさんにプレゼントを貰おうかなぁ」
そう言ってムラムラしながら土方に手を伸ばそうとしたのだが、それをキラキラした何かに阻止された。
持っていたサンタのプレゼントの袋から土方が取り出したのは、高そうな包装を施された甘い香りのする箱だった。
「け、ケーキも買ってきたぞ! 前にてめーが食いたいって言ってたなんとかって高い店のやつだ!」
テレビで放送していたクリスマスケーキの特集でやったものだとすぐ分かった。
要予約のケーキだったから、土方は今日のためにちゃんと予約してくれていたことになる。
なにからなにまでやることなすこと可愛い土方に、銀時は『しょうがねーなぁ』と笑って、
「そんじゃまずソレ食って、続きは後でね」
でも逃がす気はないと釘を刺してから、愛用の半纏を土方に着せるとケーキを持ってソファへ向かう。
土方にドタキャンされやけ食いしてお腹いっぱいだけれど、今までで一番おいしいクリスマスケーキだろうな、と思う銀時だった。
おわり
……本当は裸サンタコスは予定にありませんでした。
仕事中に、もう一捻り欲しいなと考えていたら、
思い付いてしまったので入れました……
クリスマスネタなのに変態になってすみません(笑)