原作設定(補完)

□その43
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#429

作成:2018/12/31




銀時はテレビの画面をぼんやり見ていた。

結野アナの天気予報も占いも終わったのに、次のニュースのコーナーから目が離せない。

"真選組による厳戒態勢が今だ続いております。解放されない人質の数は数十名にも及ぶと思われ……"

「こんな日に人質事件ですか。真選組は大変ですね」

そんな銀時につられて立ったままテレビを見た新八がそう言う。

ぼんやりしていたことに気付いた銀時が、

「ま、まあ、それが連中のお仕事だしね。当たり前じゃね?」

なんでないようにそう答えたが、本当にそう思っているわけじゃないのを新八は察した。

土方と付き合っていることを知っているので、本当は心配だし、本当は会えなくて寂しい、と思っていることを。

慰めてあげたかったのだが、こういうとき女のほうが現実的だ。

「だったら私たちもお仕事するネ! 時間アル! 今日の依頼を成功させないと正月の餅が食えなくなるんだからしゃきっとするアル!」

出かける支度を終わらせて仁王立ちの神楽にびしっとそう言われ、

「はーい」

2人は素直に従うのだった。



あと数時間で年が明けるころ、銀時たちはたくさんさんの餅と正月用の食材が入った袋を持って万事屋に向かっていた。

仕事は無事にこなし思っていたより良い料金を貰え、買い物もしたし、残った金で"年越しラーメン"も食べてこれた。

かぶき町は、年明けを一人で過ごしたくない寂しがり屋が集まって、夜通しのお祭り騒ぎになる。

万事屋も三人と一匹もまあまあ無事に過ごせ、

「今年は一人一杯食べられて良かったね」

「私は一杯じゃなく"いっぱい"食べたかったアル」

なんて、情けないことを笑いながら言えるぐらいには楽しい一年だった。

ただ気がかりなのは、出掛けに見ていたニュースのこと。

年末のこの時間に、事の次第を教えてくれるようなニュース番組はないだろうし、それが分かるまで銀時のもやもやは晴れそうにない。

だが二人に余計な心配をかけないように振舞おう、と決めたことは無駄になった。

万事屋への階段を登っているとき、物騒な血の匂いと足元に点々と続く血痕を見つけたからだ。

瞬時に三人ともが警戒態勢に入り階段を駆け上った先の、あまりの光景に衝撃を受ける。

「よう」

煙草の煙を吐いてからそう言ったのは土方だったけれど、髪も顔も隊服も真っ赤な血で染まっていた。

「ひ、ひひ、土方さん!? どうしたですか!? だ、大丈夫ですか!?」

立って煙草を吸って挨拶するぐらいなのだから"大丈夫"なことは分かっているけれど、軽くショックを受けて何も言えずにいる銀時と、逆にパニクって叫ぶ新八に、土方はふっと笑う。

「俺んじゃねーから大丈夫だ」

どうやらニュースでやっていた人質事件は、こういう姿になるような方法で鎮圧されたらしい。

土方の様子から、きっと真選組には大した被害もなかったのだろうが、なぜこんな姿で万事屋に来たのか。

「そ、そうですか。でもなんでここに……」

新八はそう訊ねてしまうが、やっぱりこういうときも女のほうが勘が良い。

「物騒な格好で脅かすんじゃねーアル。せっかくの気分が台無しネ。新八、ばーさんのところで飲み直すアル」

「ええ? 神楽ちゃん? 何を……うわぁっ……」

神楽は荷物と勘の悪い新八を連れて、昇ってきた階段を戻って行った。

着替える間も惜しんで、心配しているであろう銀時に無事な姿を見せに来たのだろう。

銀時もそれが分かって、小さく溜め息をついて土方に近づく。

「本当にケガねーの?」

伸ばした手は土方にかわされた。

「ねーから触んな。風呂貸してくれ」

「……はいはい」

心配させて驚かせて勝手なことを言う土方に、銀時はやれやれという顔で溜め息をつく。

今年も"全員"無事に過ごせて良かったという気持ちを込めて。



 おわり



……おおう、2018年最後の話なのに、
またしてもエロどころか、はぐもちゅーもなしに終わった(笑)
来年もこんな風に続いていくことでしょう。
一年頑張れたのはみなさまのおかげです。
ありがとうございました。
また来年もよろしくお願いします。
……というのを年明けに書いてる、いつもの私(笑)

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