原作設定(補完)

□その43
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#423

作成:2018/12/04




万事屋の室内に甘い残り香が漂っている。

今年のクリスマスイブは、スナックお登勢で客も入り乱れての無礼講ながら、持ち寄ったケーキや食べ物が溢れていた。

仕事終わりに集まった人が多く、売れ残りなどを持ってきてくれたおかげだ。

医者に甘いものを控えるように言われている銀時でも、あれだけケーキが並んでいるのに我慢などできるはずがない。

酒とケーキをたらふく飲み食いできて上機嫌の銀時だった。

そんなこんなで日付が変わる前に新八が先に帰り、神楽が食い物を手に持ったまま眠ってしまったので銀時もお開きにすることにした。

神楽を押し入れに押し込み、銀時もふらふらと和室の布団で倒れこむように寝転がる。

こんなこともあろうかと、ちゃんと敷きっぱなしにしておいたのだ。

うつぶせで枕に顔を埋めていると、自分から漂うケーキの匂いがして思わず笑ってしまう。

このまま寝てしまいたい気分になるが、さすがに真冬に掛け布団もかけずに寝るのはマズイので、起き上がろうと顔を上げたところでビクッと体を硬直させた。

外からの薄明かりだけの部屋の隅に、赤い暖かそうな服を着た誰かが背中を向けて立っていたからだ。

まごうことなきサンタクロースの服装ではあったが、酔っていてもソレと間違えるはずもなく、ゆったりしていた服でもその体系には心当たりがある。

「……何してんの、土方くん……」

そう言われて”サンタクロース”はためらった後、銀時のほうを向く。

いろんなことが不本意なのか、真っ赤な顔でふて腐れた表情をしていた。

「こ、これにはワケが……」

「でしょうね。ワケもなくこんなことをするタイプじゃないもんね」

どっこいしょ、と掛け声をかけて銀時が布団の上に座り、布団をぺんぺんと叩く。

”ここに座りなさいよ”という仕草に、土方も渋々近寄ってきて座った。

「で? 一月前から念を押してたデートの約束をドタキャンしてまでやらなきゃいけなかったお仕事がソレ?」

ハリセンボン並みにトゲのある言い方をする銀時に、土方は言葉を詰まらせる。

だが言うまで解放しない、という顔をしているので仕方なく言い訳をした。

「……ちゃんと休みは取ってあった……だけど……こ、近藤さんがサンタクロースでプレゼントを配ろうとしたら子供たちに大泣きされて……“ゴリラだからダメなんじゃねーか”って総悟にトドメ刺されて再起不能に……だから変わりが必要で……」

「それ、別に土方くんじゃなくても良くね?」

「……俺もそういったんだけど、他の連中も近藤さんの二の舞は嫌だって……」

「まあ、むさくるしい連中だしね。そしたらもう土方くんしかいねー……って、言いくるめられたんだ?」

「……う……」

銀時が呆れるように、上手いことノセられて、近藤さんに泣きつかれて、銀時との約束より仕事を取ってしまった。



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