原作設定(補完)

□その42
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土方の涙は引っ込み抱き締めている銀時の体を押しやり、銀時は“邪魔すんな”という顔でそっちを見たら、山崎が部屋に入ってきて一枚の紙を二人に見せる。

“毎日の暮らしに疲れたあなた! 牛になってのんびり生活してみませんか! 食っちゃ寝できます。反芻できます。 2日コース、1週間コース、2週間コース。保証あり”

そう書かれているチラシを読んで、土方が真っ白になっているのが分かったが山崎は説明を続けた。

「例の物件を調べていたら、そんなものが配られていたのが分かりまして……あの牛たちは、自ら希望して牛になった人だったんです……」

申し訳なさそうにそう言う山崎に、土方はまだ呆然としたままだったので銀時が代わりに尋ねる。

「そういうビジネスだったってこと? でも関係者とか居なかったんだろ?」

いたら土方がこんなに悩む必要はなかったはずだ。

「それが、やっぱり連中は攘夷志士と繋がりがあったようで、必要経費として集めた金を横流ししてたんです。当然、期限になっても人間に戻る薬を投与することもなく、ほったらかしにされていたわけで……」

土方たちが見たのはその牛たちで、あんなに騒いでいたのは関係者が姿を見せず、事態がおかしいことを察して助けを求めていたのだろう。

ようやく我に返った土方が怒鳴ると、

「な、なんでもっと早く報告しねーんだ!!」

「しようとしたんですけど副長が引き込もって聞いてくれなかったんじゃないですかぁぁぁ」

そう返されて、それ以上は怒れなくなってしまった。

「……そ、その牛たちはどうしたんだ」

「あ、はい、薬を入手して投与したんで、もうみんなもとに戻って家に帰……」

「すぐ持ってこい!!!」

「は、はいぃぃぃぃ!!」

山崎が慌てて飛び出して行くと、土方はふんと苛立ったように息をつく。

自業自得だらけだったが、簡単に解決することを大袈裟な事態にしていまたことに、牛にならずに済んでホッとするより腹が立った。

腹が立ちすぎて現状を失念していたが、

「ひーじかーたくーん」

背後から声をかけられて、土方は全身にどっと汗が吹き出す。

自分も酷い目にあったが、銀時も試すようなことを言ったり悲しませたり心配させてしまったりした。

そのオチがこれだ。

怒られても仕方ないが言い訳ぐらいしようと土方が振り返ると、

「あ、あの、そのっ、これは……」

言い終わる前に再びぎゅーっと抱き締められる。

「はぁぁぁぁ、良かったぁぁ。元に戻れるってよ、多串くん」

本気で安心した声で土方を抱き締めてくれる優しい腕に、この腕を失わずにすんだことに、土方はもう我慢できなくなった。

銀時の肩に顔を埋めてしっかりと抱き返す。

その体が震えていることも、自分の肩が濡れていることも、気付いていたけれどなにも言わず、

『こんなオチになると思ってたけどさぁ……まったくこの子はバカワイイったらありゃしない』

そう思いながら満足げに笑うのだった。


 おわり



長くなりましたが、無事に終わりました。
もっと元ネタに近づけたかったのに、
全然違う話になっちゃいましたが……仕方ない。
元ネタは、ラムちゃんが牛に噛まれて、
角が牛みたいに変化してしまい、
牛になるんじゃないかって心配してたら、
あたるに見つかって「飼ってやるから」と
泣きながら牛小屋をたててくれたけど、
バイ菌が入ると角が変化してしまうだけで治る、
という話でした。
……あれ? わりとちゃんと書けてる?(笑)
土方が牛なのでできたお話でした。
ふぅ、終わって良かった。

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