原作設定(補完)
□その42
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土方の気持ちも分かるけれど、銀時は少し寂しい気持ちになった。
「なんで、すぐに俺に言わねーの?」
そう言われて、土方は責められて怯えるみたいに目を歪ませる。
「…て、てめーに言ったって……どうしようも……」
「ならないかもしれないけど、黙ってて牛になっちゃったらどうするつもりだったの? 屯所で牛になんかなったら、沖田君にバズーカで丸焼きにされてみんなに食われちゃうよ?」
恐ろしい話だが、牛の正体が土方だと知らなければありえない話でもない、とか、沖田に至っては土方だと知っていても丸焼きにするかもしれない、とか。
第三者として落ち着いて考えればいろいろ言えるが、当事者の土方は”牛になってしまう”ということでいっぱいいっぱいだったのだ。
落ち込んでしゅんとしている土方を責めるのは可哀想だけれど、頼ってもらえずこっそり牛になろうとしたことに銀時だって傷ついていた。
「俺んとこ来てくれりゃ、一人で悩む必要もなかったのに……」
そう呟いた銀時に、土方はくしゃりと顔を歪ませた。
そうしようと、そうしたいと、何度も思った。
銀時なら今までのようになんとかしてくれるような気もしたし、一人でいるよりずっとずっと安心できただろう。
だけど、できなかった。
「……だ、だって……もし、な、何ともできなくて……て、てめーに……い、嫌がられて、見放されたら……俺は……」
それが怖くて、できなかった。
実際にさっき“牛はいらない”と拒否されてもいる。
たどたどしくも口にしたことで泣きそうになっている土方に、銀時は内心で深いため息をついた。
『それが信用してねーってことじゃないですかコノヤロー』
そう言ってやりたいのを我慢して、素早く逃げられる前に、土方の体をもふーっと抱き締める。
「大丈夫、万事屋銀ちゃん、やるときゃやるよ。絶対治してやるから……って言いてーとこだけど、お前が心配するようになんともならねーかもしれねー」
腕の中で体を強ばらせる土方に、銀時は背中をぽんぽんと優しく叩く。
「そんときゃ、ちゃんとうちで飼ってやるよ。定春が飼えるんだから牛の一頭や二頭なんてことねーよ」
「…さ、さっきは要らねーって…」
「さっきはさっき! 多串くんだって分かってりゃ、超可愛がっちゃうよ。餌はマヨネーズ、毎日風呂でキレイにして、神楽と定春みたいに一緒に寝てやる」
「…万事屋…」
「だから、俺のところに居ろ。なんてことねーって。食っちゃ寝できる牛ライフもそう悪いもんじゃねーかもしれねーだろ。……ハッ! イザとなりゃ、俺も牛になって二人で食っちゃ寝すればいいんじゃね!?」
「てめー……それは働きたくねーだけだろ……」
バカなことを名案みたいに言う銀時に、土方は呆れながら、ようやく笑った。
それが嬉しくて銀時もにいっと笑うので、土方の目に涙がたまる。
それが溢れ出そうになったとき、
「……あ、あのう……お、お話の途中ですみません……」
部屋の外からおずおずと山崎の声が聞こえてきた。
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