原作設定(補完)

□その42
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#420

作成:2018/12/01




「クリスマス、どう? 会える?」

屯所の副長室で、畳の上に寝転がってマガジンを読んでいた銀時にそう問われ、机に向かって仕事をしていた土方は眉間に皺を寄せる。

「屯所に遊びに来るな」という土方の命令に従わなかったから、ではない。

銀時を屯所に入れたのは沖田だ。

土方がつれない命令を出しているのを知って、万事屋にくだらない用事を頼むようになった。

団子を買ってこい、だの、新製品の飲み物を買ってこいだの、牛丼を買ってこいだの。

隊士に頼めばいいことをわざわざ万事屋に頼み、そのついでで銀時が副長室に寄るようになった。

最初のころは、土方が仕事で忙しくて休みをずっと取れないときに依頼していて、土方のために銀時を呼んだんじゃないかと思ったりもした。

が、どうやら銀時が居ると土方が副長室から出てこないため、その間に息抜きをしていることに気付く。

いつもだったら「そうはさせるか」と邪魔にし行くのだが、企みはどうであれ、仕事も抜け出さずに銀時に会えるのは土方にとっても都合が良かった。

銀時もわきまえているので、土方の手が空くまでゴロゴロしたり、邪魔にならない程度に話をしたり、ジャンプがないので渋々マガジンを読んだり。

そんな中でのセリフだったのだが、土方はカレンダーを見て、

「……まだ11月になったばかりだぞ」

気の早すぎる銀時にイラっとしてそう言った。

だが銀時はちゃんと根拠があります、という顔で答える。

「土方くんは外に出ないから知らないかもしれないけどね、店のディスプレイはハロウィンが終わるとすぐクリスマスになるんだよ。TDLのパレードだってもうクリスマスからね」

そう言われれば、テレビのCMとか雑誌の記事などでクリスマスっぽいのを見たような気がする。

ということは、銀時の”イベント確認”がもう始まるのか、と土方は内心でため息をつく。

基本的に土方の仕事を邪魔しないけれど、浮かれたカップル並みに行事にうるさい。

土方がそういうのに疎いのもあるし、仕事を優先させてしまうのでなんとか休みを取らせようと思っているようだ。

だが土方の返事はいつも同じだった。

「で、どう?」

「……無理だ」

そう答えてもその日が過ぎるまでしつこくしつこく聞かれる。

だからこういう大きなイベントの前は疲れてしまうのだが、

「あ、そ。分かった」

銀時はそう言ってまたマガジンを読みだした。

怒ったわけでもなく、本当にあっさりと諦めた、という感じの銀時に土方のほうが不安になる。

『…なんだ? 諦めんのが早いな……ようやく俺の立場を分かってくれたのか?』

そうだったら喜ばしいことなのだが、背中越しに銀時の鼻歌を聞きながら別なことを考えてしまった。

『……もう期待されなくなった、のかもしれねーな……いくら約束したって守れねーほうが多いし……』

”そんなことじゃ旦那にも愛想をつかされますぜぃ”

そう沖田に言われたのは、何度目のドタキャンをしたときだったか。

口では文句を言っても銀時は許してくれるのことに甘えてきた。

銀時が変わらないでくれているから、別にいいかとないがしろにしてきた。

そのせいで必要とされなくなってしまったのかもしれない。

そう思うと急に寂しくなるが素直に謝ることもできずに、土方は整理中の書類を見つめたまま動けなくなってしまった。

のを、寝転がったままちらりと見た銀時はくしゃりと笑う。

真面目な土方がもやもや考えているのはお見通しだった。

そっと起き上がって背後から土方に抱き着いて、

「なーんちゃってぇ、銀さんがそんな簡単に諦めると思ったら大間違いですぅぅぅ。ホッとしただろ、残念でしたぁぁぁ」

そう言いながらベタベタと絡んでやる。

銀時がいつもの銀時だったので、今度こそ土方がホッとしたのが分かった。

だが嫌な思いをした後なだけに土方の態度も少し柔らかくなり、

「だ、だけど…約束はできねーぞ…」

「まず努力!もしかしたらテロリストもクリスマスやりたくなるかもしれないじゃん、なにも起きないかもしれないじゃん。そしたら土方くんが休んだっていいじゃん」

確率としては低いけれど、ないこともないかもしれない。

銀時だってほぼ諦めてるのだろうから、最初から無下に断らなくてよかったのだ。

「……分かった……一応、考えておく」

土方が気恥ずかしそうにそう答えてくれたので、銀時は満足そうに笑った。

仕事優先の土方も嫌いじゃないけれど、ちょっとぐらいは自分のことも考えて欲しいと思ってわざとあんな言い方をした。

きっとクリスマスまで“なんとかできないか”考えてくれるだろうし、できなくてもちょっと拗ねて許してやるつもりだ。

万が一来てくれたら、新八と神楽と一緒にめいっぱい楽しませてやろうと思う銀時だった。


 おわり



オチを考えていなかったので、
いつものふんわりとしたバカップルな感じになりました。
うちの銀さんはヘタレだけど優しい。
土方さんもメロメロですよ……たぶん(笑)
クリスマス前のお話でした。

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