原作設定(補完)

□その41
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「銀ちゃーん、ただいまアル」

そう言って神楽はバタバタと部屋に飛び込んできたので、土方は慌ててソファに座り直す。

「トッシー、来てたアルか」

「お、おう」

土方が万事屋に遊びに来るのに慣れてきたのか、もう何とも思わなくなった神楽が何かを思い出したように言う。

が、それは土方を凍りつかせることだった。

「あ、もし出かけるなら団子屋は止めたほうが良いアル」

「あ? なんで?」

「さっちゃんが、"銀ちゃんと付き合ってる"妄想一人芝居を熱演してたアル」

「なんだ、そりゃ」

「一人で"友だちに彼氏を自慢"してたネ。声色まで変えて迫真の演技だったアル」

「あいつ……誰かが真に受けたらどうす……」

眉間にシワを寄せて呆れるような声を出した銀時だったが、そこで気が付く。

土方をチラリと見たら、顔は反らしているけれど耳も膝の上に置いた手も真っ赤だった。

「……はるほど……」

どうやら一番聞いてはいけない者がさっちゃんの一人芝居を聞いてしまったようだ。

銀時は土方のポケットから財布を取り一番小さい札を一枚取り出し、

「神楽。多串くんがこれで酢昆布買ってこいって」

ぴらつかせると神楽が待ってましたとばかりに飛びついてきた。

「きゃほぉぉぉう! トッシー、ゆっくりしていけヨ!」

神楽なりに気を使っているのだろうと信じ、慌しく出て行く神楽を見送ってから銀時は改めて土方を見る。

まだ恥ずかしくて動けなくなっている土方に、くすっと笑って手を広げて声をかけた。

「おーぐしくん。ん」

何を要求されているかは分かるが、素直に行動してやれる土方ではない。

悔しそうな顔で銀時を睨んだけれど、

「なんだよ」

「お詫びのハグ?」

勘違いで銀時を責めたことを、それでチャラにしてくれるというのだから逆らう理由はない。

素直になれないが故に憮然とした表情のまま銀時に抱き付いてやる。

そして銀時は、その体を抱き締め返したままソファの上に寝転んだ。

土方が抵抗するので愚痴ってやったら、

「久しぶりに顔を見せたと思ったら怒ってんだもんなー」

「……わ、悪い」

大人しくなったので"よしよし"と背中を出てやる。

土方は居心地悪いだろうが、せっかくなので言いたいことを言ってやろうと思った。

「噂話でカッとするぐらいならもっと会いにきてくんない?」

「……し、仕事が忙しくて……」

「分かってるけどさぁ、話したり、顔見たり、ハグしたり、チューしたりする時間ぐらいあると思うなぁ」

「そんなことのために出かける時間はねぇ」

「だから、俺が行くってば」

「……だけど」

「電話で"来い"って言ってくれりゃ行くよ」

「……てめーの邪魔はしたくねぇ」

「おまっ、万事屋の暇さをなめんじゃねーぞ。 仕事なんてねーんだから、いつでも飛んで行けますぅぅ」

自信満々に言ってることは非情に情けないことだったが、土方の胸をときめかせるのには充分だった。

勘違いで疑って喧嘩腰で押しかけて、それでも銀時は笑って許してくれる。

せっかく甘やかしてくれるのだから、素直に甘えるのが一番だろう。
だがそれができないのが土方十四郎だ。

「…………仕事しろ、ダメ社長」

そう言いながら、土方の顔はさっき"別れる"と言おうとして止めたときのような顔をしていた。

でも銀時にはちゃんと分かっているので、にいっと笑ってもう一度抱き締める。

「じゃあ、お仕事終わったらちゃんとお電話ちょうだいね」

「…………いい」

「まーだそんなこと……」

もう一言言おうとする銀時を遮るように、銀時に抱き付いている土方の手に力が入った。

「……どうせ仕事が終わったら連絡するはずだったんだ……あとちょっとだったし……」

「……だから?」

「…………帰ってから仕事する……だから……話したり、顔見たり、ハグしたり……ちゅ、チューしたりしていいぞ……」

精一杯、でも思っていた以上に土方は素直になってくれた。

真っ赤な顔で、きっと言ったことを後悔するぐらい恥ずかしがっているんだと思う。

「……ぶははははっ」

「笑うなぁぁぁぁ!!」

嬉しすぎて笑ってしまう銀さんだった。


 おわり



頑張ってイチャイチャしましたよ!
まあネタ的にはいつもの話だったんですけどね(笑)

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