原作設定(補完)

□その41
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10月10日。

約束の時間通りに万事屋にやってきた土方を、銀時が嬉しそうに出迎えるが、

「いらっしゃい! ひじか……たくん?」

開けた玄関扉の前に立つ土方は、普段銀時の前ではしないぐらい怖い顔をしていた。

両手には買い物してきたらしい袋が握られているし、銀時の誕生日を祝いにきてくれたはずなのだが討ち入りにでもきたかのようだ。

「え……ちょっと、大丈夫?」

「……」

心配して声をかけたのだが土方が両手の荷物を差し出したので、銀時は首を傾げながら荷物を受け取って中に入る。

部屋のテーブルに荷物を置いて振り返ると、ちゃんと着いて来た土方が銀時を怖い顔のままじっと見つめていた。

「な、何?」

へらっと笑う銀時に、土方は"人の気もしらねーで"とイラつきを募らせる。

結局銀時の欲しいものは分からないままで、

「土方さん、非番を楽しんできてくだせぇ。土方さんの心温まる普通の贈り物があれば旦那も喜んでくれますよ」

なんて沖田に嫌味を言われながら出てきたのだ。

この状態で"楽しむ"なんてできるはずもなく、最終手段を取るしかない。

付き合ってる仲としては"総悟に聞いた"なんて情けなくて言いたくなかったのだが、誤魔化せないように直接問い詰めるしかなかった。

「てめーの欲しいもんて何だ」

「へ?」

「欲しいもん、あんだろ」

怖い顔と裏腹に気恥ずかしいことを訊ねられ、銀時は前に電話で同じことを聞かれたことを思い出す。

「またそれ? 会いにきてくれたんだから、それで良いって言ってんじゃん」

「本当は他にあるだろ」

「だーかーら……」

「……総悟には教えたんだろうが」

沖田の名前を出されて、ようやく土方が不機嫌な理由を察して銀時は溜め息をついた。

「沖田くん……なんで言っちゃうかな」

そう呟いてみたが、どう考えても土方だけではなく銀時に対しての嫌がらせのためだ。

そうとは知らずに、たぶん、土方がさんざん悩んだ後に電話をかけてくれたのを逆ギレで誤魔化したりしてしまった。

結局分からなくてこうして怒っている土方を、これ以上怒らせるわけにもいかない。

「……聞きてーの?」

思いのほか素直にその気になってくれた銀時に、土方の怖い顔も崩れる。

「聞きてー」

「聞いちゃったら大変なのは土方くんなんだけど」

「………か、金なら多少はある……」

「あ? 金は必要ないよ」

「………お、俺は真選組が一番大切だって言ってあるだろ……」

「聞いてるよ? でも、真選組も関係ないから」

土方の想像した"欲しいもの"はことごとく却下されたようだ。

じゃあ他に何が……、とゴクリと息を飲む土方に銀時は教えてくれた。


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