原作設定(補完)
□その41
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その頃、真選組の会議室でも土方が畳に座ってぐったりと肩を落としていた。
かなり酷い二日酔いで、起きたときには昨夜のことを何も覚えていないほどだった。
だが一番土方を落ち込ませているのは、昨夜何があったのかを無表情で、でも内心では笑いながら沖田が話してくれたことだ。
「……万事屋に……言っちまった?……」
「泥酔してたくせにくっきりはっきりした口調で、きっぱり告白してやした」
余計に落ち込む土方に、近藤が慌ててフォローを入れる。
「で、でもな、万事屋も酔ってたから覚えてないかもしれないぞっ」
「……そ、そうかな」
「近藤さんはとっくに潰れててしらないでしょうけど……かぶき町中の人間が目撃してたんですぜぃ」
「……それじゃあ」
「旦那が覚えてなくてもいまごろ万事屋に問い合わせ多数の大騒ぎでさぁ」
我慢できなくなったのか沖田がにやりと笑ってそう言ったので、土方は絶望的な顔で項垂れる。
銀時に片想いしてからもうだいぶ経つ。
絶対に叶うはずのない想いだから言うつもりはなかったし、誰にも知られないように隠すはずだった。
なのにこっそり銀時を見ているのをよりにもよって沖田に見つかり、どんな言い訳も通用せずズバリと当てられても誤魔化すこともできず、結局屯所の全員が知る羽目になった。
局長命令で緘口令を敷いてもらったので本人に知られずに済んでいたのに、酔っ払った勢いで自分で話してしまうなんて。
落ち込む土方に、フォロー失敗の近藤が申し訳なさそうに声をかける。
「だ、だけどな、いいきっかけなんじゃないか? もしかしたら万事屋も満更じゃないかもしれないだろ」
「ハトが豆鉄砲食らったような顔をしてやした」
「で、でも、告白されたら嬉しいかもしれないし……トシなら充分イケメンだしな!」
「女にモテモテなのに? 男じゃ迷惑じゃねーですかぃ」
「総悟ぉぉ」
ちっともフォローさせてくれない沖田に近藤が情けない声を出す。
だがそんなこと言われなくて土方には分かっていた。
言うはずがないことを銀時に言ってしまったのは、モテモテの現場を見てしまったらだ。
望みのない片想いをして、かといって素直になって仲良くする努力もできなくて、なのに嫉妬してイライラして。
そのせいで自棄酒したが、そのまま屯所に戻ってきて翌朝の二日酔いで終わるはずだった。
告白したことはちっとも覚えてないけれど、銀時にばったり顔を見たとたんにキレたんだろう。
言ってしまったことはもう仕方ない。
だけど近藤が言うようにこれをきっかけにしようという気にもならなかった。
「……お、俺は……外に出ねぇ……」
「え? トシ?」
「万事屋に会いたく……合わせる顔がねぇ……」
「だから屯所に引き篭もるんですかぃ? まるでトッシーじゃねーですかぃ」
「うるさい! 出ないったら出ないんだよ!!」
子供の駄々みたいなことをい出す土方に、沖田は肩を竦めて部屋を出て行った。
呆れられているのも分かるが、今はどうしても銀時の顔を見たくない。
だが土方の性格も気持ちも分かっている近藤が心配そうに声をかける。
「トシ……本当にそれでいいのか?」
「…………」
分からない。
聞かれてもすぐに出すことのできない答えに、土方はぎゅっと手を握り締めた。
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