原作設定(補完)
□その41
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#404
作成:2018/10/02
市中見回りをしていた土方と沖田は、大きな荷物を抱えた新八と神楽に会った。
買い物帰りのようだったので沖田がからかう。
「万年貧乏の万事屋さんが買い物たぁ、珍しいじゃねぇかぃ」
「余計なお世話アル。お前こそ給料分働けよ、税金泥棒がっ」
一触即発でいがみ合う沖田と神楽を、緩い目で見守るしかない土方と新八だった。
周りを巻き込んで大事になる前に止めるとして、止めるとばっちりを食うので傍観する間に事情を説明する。
「今日は銀さんの誕生日なんです。なのでささやかですけどお祝いしてあげようと思って」
そう言った途端、隣に立っている土方が固まったのを、空気の読める男の新八は気付いた。
普段は喧嘩ばかりの2人が付き合っているのも知っている。
「土方さん?」
「……誕生日なのか?」
「そうです」
「……俺は聞いてねぇ」
「はは。僕たちも聞いてないですよ」
ん?という顔をする土方に、銀時は肩を竦めながら笑う。
「聞いても教えてくれなかったんですよね。だから無理矢理聞き出したんです。おやつ抜きにしますよー、って言って」
三十路前の男に出す条件としては情けないものだったが、銀時にとっておやつは大事なものなのだ。
渋々という顔で教えてくれた。
「なんで言わねーんだ?」
「誕生日を祝われるのが恥ずかしいみたいですよ」
「……らしくねーだろ」
「ですよねぇ」
普段は殿様気分でチヤホヤされたいと思っているくせに、本気で祝われたりするのが照れくさいなんて。
新八たちは無理矢理聞きだしたことで納得し祝ってやることにしたようだが、土方のほうはモヤモヤした気分になる。
土方の誕生日はどこかで聞いたらしくて祝ってくれた。
その時に銀時の誕生日も訊ねたのだがはぐらかされて、そのままになってしまっていたのだ。
土方も無理矢理聞けばよかった。
だから"教えてもらえなかった"ことにモヤモヤしている。
土方が物思いに耽っている間に神楽と沖田の喧嘩はエスカレートしてしまったようで、
「土方さん! そろそろマズイです!」
新八に言われ、慌てて2人を止めに行くのだった。
銀時の"誕生日パーチー"は下のお登勢で催してくれた。
新八が作った普通に美味しい料理や、神楽の作ってくれた見た目以上に独特な味のケーキ。
2人に頼まれたのか、お登勢も珍しく酒を好きなだけ出してくれた。
誕生日を祝われるなんて気恥ずかしくてギリギリまで逃げようかと思っていたのだが、最初だけ我慢して酔ってしまえば楽しいだけ。
こういうのもなかなか良いものだな、なんて気楽に思う銀時だった。
「うぃ〜……ちょっと厠……」
ふらりと立ち上がって厠に向かったが、扉を開けようとしたのに開かない。
タマがやってきて、
「誰かが寝ていて扉をふさいでいます。おそらく長谷川様かと思われます。壊しますか?」
なんて言うので銀時は首を振る。
「後で弁償させられるから嫌だ。上に行ってくるよ」
銀時はふらついた足取りで店を出て、ちょっと鼻歌なんか口ずさみながら階段を登って万事屋の玄関に……出たところでびくりと体を強張らせた。
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