原作設定(補完)
□その40
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そんな時、山崎がある場所で偶然、実際に"白夜叉を見た"という老人を見つけてきた。
詳しい話を聞いたが、それだけでは噂話と大差なく、「見れば分かる」と男は言うので土方は会わせてみることにした。
「なになに、土方くん。お仕事中に呼び出すなんて」
「いいから黙って着いて来い」
隊服のまま万事屋に迎えに来た土方に、銀時は首をかしげながら同行する。
そして連れて来られたのは、昼間からやってる小さな屋台。
ますます状況の分からない銀時を余所に、土方は酒を飲んでる老人に話しかけた。
「こいつか、じいさん」
「土方くん?」
「あんたが見た"白夜叉"はこいつか?」
「!?」
土方が思いも寄らぬことを言いだして、銀時は老人を見る。
振り返った老人は食い入るように銀時を見つめた後、
「違うな。こんな死んだ魚のような目はしてなかった。もっときりっとした顔立ちじゃった」
なんて言い出した。
それは土方も銀時に言ったことがあることで、眉間にシワを寄せると銀時の胸倉を掴んで引き寄せる。
「てめー、きりっとした顔しろよ。いざというときは煌けるんだろ」
実に失礼な物言いだったが、銀時はにやっと笑った。
「無理。こんなじいさん相手に煌けない。土方くんがストリップしてくれたらギンギンに煌けるんだけどなぁ」
土方はまたふざけたこと言い出す銀時の股間をドカッと蹴り上げる。
「ぐあはぁっ!!」
「どこギンギンにするつもりだっ!」
股間を押さえて蹲って小刻みに震えている銀時をほったらかしにして、土方はじいさんに再度訊ねた。
「……ほんとにこいつじゃねーか?」
「違うなぁ」
「……分かった。手間とらせてすまなかった」
そう言って土方は蹲ったままの銀時の襟首を掴むと、そのままずるずると引きずってその場を離れた。
それを見送る老人の目に、昔戦場で見た若い侍の姿が浮かんだ。
白い髪も服も赤く染めてなお、刀を振り続ける恐ろしい姿だった。
だが、あんな恐ろしい鬼でさえ笑って生きているのだから侍の負けたこの世の中も捨てたものじゃないんだな、と思えた。
途中で疲れたのか土方が銀時を引きずる手を離したので、立ち上がって後ろをついて行った。
前に「白夜叉なのか」と聞かれたとき、確かめる術もないだろうと誤魔化した。
だけどそれを証明する者を探し出してまで確認したかったとは。
『……ま、言ったって別にいいんだけどさぁ』
気になるのはそれを確かめてしまったとき、土方がどうするのか、
だ。
真選組の副長として元攘夷志士なんかと付き合えないと、言われてしまうかもしれない。
せっかく素直になって告白して付き合うことになったのにな、と土方の背中を見ながら銀時がそう思っていると、その背中がぴたりと立ち止まる。
土方は少し考えるかのように動かなかったが、振り返って銀時を見た。
「……万事屋……お前……」
「……ん?」
改めて「白夜叉か」と問われたらどうしようかと不安がる銀時に対し、
「……団子、食うか?」
気まずそうにそう言った。
土方も白夜叉かどうか確かめようとしたことを、後ろ暗いと思っているのだろう。
だったら銀時はいつものように笑うだけ。
「……団子もいいけど、俺の息子の安否を確認して欲しいなぁ」
調子に乗ってそんなことを言ってみたら、土方の"足"にぐっと力が入ったのが見えたので、
「嘘ですっ、大丈夫ですっ、元気ですぅぅ」
銀時は慌てて自己申告で息子の安否を報告した。
土方のほうも銀時がいつものようにふざけてくれるのが内心では嬉しい。
このままの関係を望んでいてくれているのだから。
なので銀時の下品な"お誘い"に乗ってやることにした。
「……じゃあ、本当に大丈夫かどうか確認してやる」
「……いやん、土方くんのえっちぃ」
「そのほうが嬉しいだろ」
「もちろんでっす」
いつかは本当のことが分かる日が来るとしても、今はまだこのままで。
おわり
もうちょっとしっかりした話で書きたかった。
……と、いつも思う(笑)
ちょっとだけ下ネタでした。