原作設定(補完)

□その40
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#399

作成:2018/08/12




土方十四郎は悩んでいた。

悩みの種は、万事屋の坂田銀時。

喧嘩ばかりしていた銀時の事が、特別な意味で気になるんだと気付いたのは一年前。

だが悩みはそれじゃない。

特別だと気付いてもそれを言えるはずもなく、言う気もなく、仕事も忙しかったし「まあいいや」と割り切ることができたからだ。

なのに、実は銀時も土方のことが好きだと言い出したのだ。

しかしそれも悩むことじゃなかった。

そのまま付き合うことになり、"喧嘩するほど仲が良い"と嫌味を言われるほど上手くいっていた。

不満も気に入らないところもあるけど、一緒にいると楽しい。

このままずっとこの関係が続いてくれればいい。

そう思うたびに、銀時に関するある問題が土方を悩ませるのだ。

"白夜叉"

銀時に出会う前から噂だけは聞いていた、攘夷戦争時代に鬼神のごとく暴れまわった攘夷志士。

だが今でも活動している桂や高杉と違い、姿を現さないために"噂"で終わりそうだった存在。

捕縛された攘夷志士に彼を見た者はおらず、分かっているのは"銀色の髪に白い装束で鬼のように強い"ということだけ。

そして知った坂田銀時という存在は、それと疑わせるには充分だった。

さらに知れば知るほど、疑うのを疑わせる人格。

「伝説の攘夷志士が旦那みたいにちゃらんぽらんじゃあ、やる気がうせまさぁ」

沖田にそれを言われちゃお終いだ、と思うのだが、説得力があるほど銀時は適当でいい加減だ。

それが分かっているのに好きになった自分にも呆れる。

ただ、銀時と付き合っていく以上、それを確かめずにはいられないと土方は悩んでいるのだ。

もちろん、本人にそれを聞いたこともある。

「おい、万事屋! てめー、"白夜叉"なのか!?」

「は? 白い野菜? 大根とか白菜とか?」

「しーろーやーしゃ!」

「白金に優しい自転車屋があるか? 知らね」

『このやろぉぉぉぉぉ!!!』

とぼけるにしてももっと可愛げのあるとぼけ方をしろ、と言いたいぐらい憎たらしい。

「それよりさ、お疲れの土方くんに今日はマヨフルコースを用意してみました! じゃーん」

「…………マヨかかってねーだろ」

「どうせ自分でかけるんだから同じじゃん。でも好きなもんばっかだろ? 好きなだけマヨかけて食えー」

「……おう」

憎たらしいけど優しい。

できれば手放したくない、そう思っている。


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