原作設定(補完)

□その40
16ページ/24ページ

#397

作成:2018/08/10




いつもの時間、銀時は団子屋でぼんやりと団子を食べていた。

"来れたら来る"

という曖昧な約束だけれど、可能な限り頑張って来てくれているのを知っているので、来なくても気にはしない。

だけどここ1週間、昨日までは仕事で忙しくて会えなかったため、仕事が片付くと言っていた今日はちょっと期待していた。

そんな中、団子をもう一本手に取ろうとして、殺気を感じた銀時はひらりとその場から逃げる。

銀時がいた足元の地面にどかーんと"100t"と書かれた大きなな木槌がめり込んだ。

さすがに100tはフェイクだろうが、かなりの重量がありそうなその木槌の手元の先には沖田が立っている。

「な、なにすんだぁ! 殺す気かぁぁぁぁ!!」

「土方さんと同じところに送ってやろうと思ったんでさぁ」

いつもの悪ふざけかと思いきや、沖田は真面目な顔でそう言った。

銀時の血の気が一瞬で引く。

「……な……」

「昨夜の出動で近藤さんをかばって…」

そう言って顔を反らした沖田の表情は悔しさの中にも悲しみが含まれているように見えた。

いつも「死ね土方」と言っては命を狙い続けているのにそんな顔をするなんて、本当に何かあったのかもしれない。

「……どう…したんだよ……」

不安げな声で銀時が訊ねたら、

「滑って転んで頭打って入院してるんでさぁ」

真面目な表情をコロッと崩していつもの憎たらしい顔でそう答えた。

「ベタだな!」

「3日も入院で暇そうだから、旦那も病院送りにしてやりまさぁ。ありがたく思ってくだせぇ」

木槌を振り回す沖田は本気の目をしていたので、

「行くから! 入院しなくてもお見舞いぐらい行くから! じゃあまたね!」

銀時はそう言ってぴゅーっとその場から逃走するのだった。




病院に着くと警備の隊士たちは銀時を病室に通してくれて、二人きりにしてくれた。

土方はベッドで眠っていて、沖田が言っていたように頭に包帯を巻かれた以外にもあちこちテープが貼られている。

物音を立てないようにベッドの脇の椅子に座った。

整ったキレイな顔に傷を作って、と思いながら黙って寝顔を見つめる。

土方は自分の見た目がどうとか気にしないせいで、ケガをしようがおかまいなしなところがある。

今日だって近藤を庇った瞬間には、ケガをしたら心配する者がたくさんいることなんて考えなかっただろう。

特に、俺のことなんかこれっぽっちも思い出さないんだろーなー、と銀時は思うのだ。

握り締めた手が温かい。

沖田にあんなことを言われたとき本当にすごく怖くなったけれど、それを確認してようやく安心した。

溜め息をつきながら寝顔を見ていたら眠くなってきて、銀時も目を閉じた。




土方が目を覚ますと銀時がいた。

ベッドに突っ伏して、自分の手をぎゅっと握ったまま眠っている。

誰かからケガをしたことを聞いて駆けつけてきてくれたのだろうか。

大事なものを一杯抱えてあちこち走り回って暴れていることを、山崎の報告書で知っていた。

その大事な物の中に自分も入っていて、こうして心配してくれていることも知っている。

だから、近藤をかばおうを飛び出したときに一瞬だけ銀時の顔がよぎってしまった。

銀時はそんなこと思いもしないだろうから、自分を薄情なヤツだと思っていることだろう。

口をあけてだらしない顔に小さく吹き出してから、銀時の手を握り返して目を閉じた。


 おわり



ネタメモから持ってきたんだけど……怪我をした状況が前話と同じだ(笑)
イチャイチャしてるけど会話もなく終わったな……
似たもの同士で同じ事を考えている2人、ってのが好き。


次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ