原作設定(補完)
□その40
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#396
作成:2018/08/02
その日、銀時はある決意を胸に、緊張のあまり味のしない団子を食べていた。
そろそろ目的の人物がやってくるかと思うと、団子も喉につまりそうになる。
なので余計に喉が渇いてしまい、何度もお茶を頼んでしまっていた。
「おねーちゃん、お茶、おかわりっ」
「俺にも。それとマヨ団子」
ふいにそう声が聞えて、銀時の心臓が跳ね上がる。
同じ長いすに座ると疲れているのか深い溜め息と、煙草の香りが銀時まで届いた。
ドキドキしながらチラリと横目で見ると、疲れた顔の土方が座っている。
「お、お疲れ」
「おう」
顔を合わせれば喧嘩ばかりだったのに、最近はこんな風に普通な会話ができるようになってきた。
だからこそ、決めたのだ。
ずっと秘めていた想いを、土方に告白する……予告をしようと。
「あ、あのさー」
「あ?」
「は、話があるんだけども」
「なんだ?」
「いや、ここじゃなんだから……次の非番いつ?」
「来週の火曜だけど……なんだよ」
「じゃあ、火曜日にここで待ち合わせようぜ」
「なんでそんなこと?」
「だ、だから、ちょっと話したいことがあるんですぅ」
「……今言えよ」
銀時があまりにも煮え切らなく焦らすので土方が不満そうに眉間にシワを寄せるが、それすらも可愛く見えるのだからもう限界で、我慢できなくなった。
だからといって一方的な想いを土方にぶつけるつもりはない。
土方も少なからず同じ想いであると思ったから、ちゃんと言いたくなったのだ。
「やですぅ……最高のシチュエーションで言いてーじゃん」
「……そうかよ」
意味有り気な銀時に、土方のほうも何か察したのかもしれない。
素っ気無くそう言ってその場は引いた土方も、銀時に気付かれないように嬉しそうに顔を歪めた。
翌週、火曜日。
「それじゃ仕事に行ってくる。そのあとそのまま出かけてくるから」
朝からソワソワしていた銀時が、昼前に依頼に行く準備をしてそう言った。
今日は大工仕事の手伝いをしたあとに、出かけてくると前から言われていたのだが、
「あ、もしかしたら、今日は帰らないかもしれないなぁ」
だらしない顔でそう言う銀時に、新八も神楽も理由はわざわざ訊ねたくない。
「……公園や道端で寝ないでくださいよ」
「夏風邪はバカがひくアル」
なのでズレた返事をしてやったが銀時は気にならなかったようだ。
「そんなところで寝ませんんんん。じゃ、いってきま〜す」
嬉しそうな顔をして出かけて行った。
二人はやれやれと顔を見合わせ、帰ってきてからもどうなることやらと溜め息をつく。
だが、銀時は思いもよらず早く帰ってくることになる。
のんびりしているところへ万事屋の電話が鳴り、
「はい、万事屋銀ちゃん…………あ、棟梁。 え? 銀さんが!?」
依頼先の大工の棟梁からで、銀時が仕事中にケガをしたと言われ、二人は急いでかけつけた。
「あ? 新八に神楽、何しに来たんだよ」
頭に包帯が巻かれているものの、わざわざ駆けつけた二人にそんなことを言うぐらいは元気そうだ。
憎たらしいので思わず殴りつけたくなるが、頭をケガしているようなので我慢する。
「無事なようですね。大丈夫ですか?」
「あ? これか? じじいを助けたときにちょっと打っただけだっつーの」
どうやら仕事中、屋根の上でふら付いた棟梁を助けて頭を打ったらしい。
だが、棟梁は不機嫌そうに反論する。
「何言ってやがんでぃ。俺を助けたせいじゃねーだろーが」
正確には、棟梁を助けようとして勢いあまって屋根から落ち、ひらりと見事な受け身で着地したところに車が走ってきて、それを避けたら建物の壁に頭から突っ込んでケガをした、というオチだった。
それもまた銀時らしいと言えばらしい。
「……まあ、大丈夫なら良かったです。じゃあ、予定通り遊びに行けそうですか?」
だが、新八が仕事の後の外出予定を確認したら、
「は? 遊び?」
きょとんとした顔でそう言われた。
本当になんのことか分からないという顔だったので、あれ、と思いながら新八が説明する。
「今日は依頼の後に出かけて来るって……泊まりになるかもしれないって、朝に……」
「??? そう、なのか?」
「ずっと前から言ってたアル」
二人にそう言われても銀時は心当たりがないようで首を傾げた。
今朝のことなので新八たちが勘違いしているということはない。
となると、
「……銀さん……もしかして……」
「またくるくるぱーになったアルか?」
「……えぇぇぇぇぇぇ……」
"またか"と三人揃って心底嫌そうな顔をするのだった。
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