原作設定(補完)

□その40
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#391

作成:2018/07/18




銀時は屯所の門前で、不満そうに唇を尖らせていた。

手には異様な臭気を放つ弁当箱が握られている。

仕事も金もないので、新八が持ってきたお妙の差し入れを近藤に売りつけようと思って来たのだが、留守だと言われた。

近藤に用事……という口実で土方に会いに来たのに、土方も居ないらしい。

だが銀時は諦めず、首を傾げる。

『……何か変だな』

銀時を門前払いした隊士は、何か緊迫した様子で断固として銀時はここを通さない、という顔をしていた。

気合が入りすぎていて、よけいに怪しい。

たぶん近藤……いや、土方に絶対に通すなと言われたのだろう。

『……ということは、中に居るってことだな』

拒否られると尚更会いたくなってしまうというもので、銀時は見つからない場所からこっそりと中へ侵入した。

屯所の中は特に変わった様子もなく、門前払いの理由が重大任務とかではなさそうなので、銀時は土方を探してうろついてみる。

幸い隊士たちには遭遇せず、会議室のあたりで土方の声が聞えてそーっと近づいて聞き耳をたてた。

「やだぁ、トシぃ。それ似合うぅぅぅ」

「……そ、そうか」

「やっぱり土方さんが一番でさぁ。じゃ、そういうことで……」

「待てコラァァァ! てめーだって似合ってるだろうが! 充分キレイだぞ!!」

「そんなことありやせん。土方さんが一番キレイでさぁ」

「てめーだ!!」

「土方さんでさぁ」

「……ねえ、俺は?」

という会話を聞いた銀時は眉間にシワを寄せる。

どうやら中には近藤、土方、沖田が居るようだが、どうも話の内容がおかしい。

だが、門前払いを食らわされた理由と関係あるのだろうし、気になるので思いきって乱入してやった。

「ひっじかったくーん、あっそびましょーっ!!」

どうせ不法侵入で怒られるだろうし、ならせめて明るく振舞ってやろうと思ったのだが、銀時は目の前の光景を見て凍りつく。

部屋の床には色とりどりの女物の着物だの帯だの装飾品が広げられていた。

真選組の会議室に何でそんなものが、と言いたいところだが理由は明白。

ばっちりがっちりフルメイクで女装した近藤、土方、沖田の三人が、銀時を見てぎょっとしていたからだ。

コレを見られたくなかったから居留守をつかわれたのか、と納得。

「な、ななななな、何してんだテメェェェェ!!!」

「……いや、こっちのセリフだよね、それ。何してんの、それ」

最初に我に返った土方が真っ赤な顔をして怒鳴るので、銀時が冷静に切り返す。


変だと思われているんじゃないかと土方はものすごく恥ずかしがっているようだが、仕事だのなんだので数回女装している銀時なので別に変だとは思っていない。

女装よりも恥ずかしがってる土方のほうが新鮮だった。

「……な、何って……」

「そんなことより旦那。俺と土方さん、どっちがキレイですかぃ?」

返答に躊躇っている土方に割って入って、沖田がそんなことを聞いてくる。

後ろで近藤が「俺は?」な顔をしているが、当然ヒゲゴリラが比べ物になるはずもなく、銀時は二人をじっと見比べた。

焦ったのは土方で、

「ばっ……コイツにそんなこと聞いたって……」

何て答えるか決まってるじゃねえか、と思ったし、もちろんだからこそ沖田は銀時に聞いたのだ。

二人が付き合っているのは真選組公認なので、銀時は迷いもせずに
「土方」と答えるはずだと思ったのに、

「んー…………沖田くんのほうがキレイ、かな」

なんて言われて二人ともそれぞれにショックを受ける。

「旦那ぁ、そんな的外れな答えは聞いてやせんぜ」

思惑が外れてガッカリする沖田と、"ショックを受けている"ことにショックを受けて眉間にシワを寄せる土方。

女装している格好でキレイだと言われたいわけでもないし、普段でも
銀時にその手のことを言われたことがあるわけでもない。

だが言わなくてもそう思ってくれてるんじゃないか、と自惚れていた自分が恥ずかしくなった。

「つーかさ、結局なんなの、それ。とうとう真選組解散してオカマバーに転職?」

銀時が呆れたようにそう言ったので、傷心している場合じゃないと土方がしぶしぶ説明しくれる。

「仕事だ。あるお方の護衛で男子禁制の場所に行かなくちゃいけないんだ」

「……だから女装? ぶふーっ、大変ね、公務員も」

笑われてしまったが、よくよく考えれば土方にとっては結果オーライなのだった。

「総悟。コイツがお前って言ったんだから、お前が行けよ」

「えぇぇぇぇぇ」

どうやら誰が一番女装が似合っているかと決めるために、屯所でお試し会を催していたようだ。


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